ドイツのイェンス・シュパーン連邦保健相は24日、連邦政府が4億ユーロ(約504億円)を投じ、トランプ氏を治したモノクローナル抗体医薬品という「抗体の魔法の薬」を20万本購入したことを「ビルト」紙に明らかにした。

 ドイツ保健省によると、20万本の投与量はイーライリリーとリジェネロン・ファーマシューティカルズから購入したという。欧州医薬品庁はまだ正式に承認していない。このように、ドイツはEUで初めてこのような抗体医薬品を使用した国となった。

 シュパーン連邦保健相は、ハイリスクの患者に対して、感染の初期段階で抗体医薬品を使用すれば、重症化する確率を効果的に下げることができると述べた。ドイツの保健省によると、抗体医薬品は今後数週間かけて指定された病院に順次無料で配布されるという。

 昨年10月、当時トランプ前大統領が武漢肺炎(新型コロナウイルス感染症、COVID-19)に感染して入院した際、リジェネロンが開発し、現在も臨床試験中のモノクローナル抗体医薬品を使用した。 米国の医薬品規制当局は、この時点では抗体医薬品の緊急使用認可を認めているに過ぎない。

 抗体薬は外来タンパク質であり、中和抗体の体内での産生に頼る必要がなくなったことを示す。リスクの高い患者にとって、最低でも1週間は時間を節約することができる。感染初期には、ウイルスの数量を抑え、重症化を防ぐための抗体が十分にある。また、シュパーン連邦保健相は、抗体医薬品を「受動的なワクチン」と称した。

 正常な免疫系を持つ人がウイルスに感染すると、いくつかの免疫反応メカニズムを活性化させるが、そのうちの一つが抗体である。抗体タンパク質は病原体の特異的な構造を認識し、それに結合することでウイルスを「中和」する。回復後も、免疫系は病原体の特異的な構造を「記憶」しているため、再び同じウイルスと対峙した際には、より迅速に抗体を産生することができ、ウイルスに対する「免疫」効果を得ることができる。

 現在使用されているモノクローナル抗体医薬品は、武漢肺炎ウイルスの「棘突起タンパク質」を標的としている。ヒト細胞の結合部位に侵入する「棘突起タンパク質」が抗体によって中和されると、ウイルスがヒト細胞に侵入しにくくなる。

 アメリカ食品医薬品局(FDA)は、イーライリリー社製の抗体医薬品について、850例の臨床試験で2種類の重篤な副作用が認められた臨床試験データを発表した。リジェネロンの製品には、今のところ重大な副作用はない。

 FDAは、外来のタンパク質として、両方の薬はまだアレルギー反応を引き起こすリスクをもたらすことを警告した。長期的な副作用について、十分な臨床データが得られていないことすらある。

 一部の専門家は、モノクローナル抗体医薬品はウイルスの1つの特徴的なタンパク質に対してしか作用しないため、変異したウイルスを扱うリスクが高まることを懸念している。

(翻訳・徳永木里子)

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