中国の億万長者が近年、次々と「姿を消し」、世界の投資家の間で懸念が広がっています。

 アリババの創設者であるジャック・マーは先日、浙江省杭州市の雲谷学校に姿を現し、トップニュースとなりました。ジャック・マーは2020年に中国共産党の金融規制体制を批判して共産党を怒らせた後、しばらくは公の場から姿を消し、彼の巨大なビジネス帝国も打撃を受けました。

 しかし、ジャック・マーは公に姿を消した初めての億万長者ではありません。2015年には、上海の復星集団(グループ)の郭広昌会長が消息を絶ちました。同社は後に、郭広昌が当局の調査に協力していると発表しました。

 2017年には、明天グループの傘下「明天系」の創設者である肖建華が中国当局によって香港で秘密裏に逮捕され、本土に戻った後、長い間音信不通となっていました。2022年になって、肖建華は詐欺と汚職の罪で有罪判決を受け、13年の懲役刑が言い渡されました。

 2020年3月、不動産大手の富豪である任志強が習近平を批判した後、消息を絶ちました。同年、任志強は汚職の罪で18年の懲役刑を言い渡されました。

 中国の億万長者たちの謎の失踪は、これだけにとどまらなかったのです。今年2月、中国のテクノロジー投資界の大物、包凡(バオ・ファン)が「失踪者」リストに加わりました。数日後、彼の会社は当局の調査に協力していると発表しました。

 CNBCが報じたところによれば、英エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)の世界貿易主任アナリストであるニック・マローは、バオ・ファンのような注目を集める人物が何の説明もなく突然姿を消すことは、投資家の背筋を凍らせることは必至であるだろうと述べました。ある地域や業界の重要なリーダーが突然いなくなることがあるとしたら、人々はそれでもそこでビジネスをしたいと思うでしょうか。

 中国で近年、億万長者の数が増え続けており、彼らは莫大な富と大きな影響力を持っています。しかし、なぜ中国共産党は彼らを打撃するのでしょうか?

 BBCは、習近平の指導下で、中国共産党が経済分野での権力を取り戻したいと考えており、そのための手段はしばしば秘密的なものであるとオブザーバーの言葉を引用して報じました。

 同記事によると、「共同富裕」政策のもと、ほとんどの経済分野が厳しい打撃を受け、特にテクノロジー分野が注目されているといいます。グローバルコンサルティング会社「アルブライト・ストーンブリッジ・グループ」の中国と技術政策を担当する上級副社長のポール・トリオロは、「中国当局は、大規模なテクノロジープラットフォーム企業や関係者が独自のブランドや影響力を築かないようにすることに引き続き注力している。そうしなければ、コントロールが難しく、中国当局の意向に反する可能性が高くなる」と述べました。

 中国の民間企業家は、数年にわたる規制の取り締まりと「ゼロコロナ政策」の打撃を経て、今や熱意が低下しています。中国経済が大打撃を受けた後、中国当局は民間企業家の信頼を回復しようとしているが、企業家の楽観的な気持ちを高めることはできませんでした。

 海南省は、民間企業家をなだめるため、民間企業家への支援策について声明を出したほどでした。しかし、ピーターソン国際経済研究所(PIIE)のニコラス・ラーディ上級研究員は、「声明だけでは民間企業家の信頼を回復させることはできない。経済における中国共産党の役割を減らすなどの実際の行動が必要だ」述べました。

 ニコラス・ラーディは、昨年、中国の民間投資が停滞し、国家投資が急増したと述べました。しかし、民間投資はより効率的、より多くの経済成長をもたらすことができます。今年に入ってから、中国国内の民間投資のペースがさらに低下しているようです。

 公式データによると、2022年の国家主導の投資は10.1%増加し、民間投資はわずか0.9%しか増加しませんでした。

 習近平が率いる中国共産党政権は、ここ数年に実施してきた商業政策で、民間企業をおびえさせています。しかし、皮肉なことに、英ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)のスティーブ・ツァン教授は、「習近平、中央人民政府、海南省政府は、自分たちが反商業であるとは思っていない」と述べています。

(翻訳・藍彧)