北京故宮の乾清宮の内部。皇帝の「龍座」が安置されその上に『正大光明』の扁額がある。(イメージ:Wikimedia Commons / Vaiz Ha / CC BY

 宮廷ドラマを見たことがある人や故宮に行ったことがある人は、皇帝の「龍座」をご存知かと思います。美しい彫刻が施されており、きらびやかに見えます。

 古代中国では皇帝は「真龍天子」と呼ばれ、古代人は皇帝は天上の龍が下界に降りたと言われていたため、龍は皇族のシンボルとなりました。皇帝の身の周りの物は、龍冠、龍の衣、龍座などと呼ばれていました。龍座は、古代皇帝専用の椅子であり、王権の象徴と最高の権利を表しています。皇帝だけが座る資格があり、もし庶民が勝手に座ったら、罪を問われてしまいます。

 龍座の材料は果たして貴重なものでしょうか。龍座はまるで黄金でできているかのように金色に輝いています。しかし、実際には黄金でできているわけではありません。実は木で彫刻され、金色の塗装を塗り重ねているのです。

 龍座の正式名称は「(注)髹(キュウ)金彫りの龍の木製椅子」と呼ばれていました。しかし、木製といっても普通の木材ではありません。フレームには最高級のローズウッドやゴールデンシルクを使用し、内側には弾力のある樺の木が使われています。

 龍座のを彫刻ができるのはすべて名だたる彫刻師で、その精緻性を確保するため、すべて最高品質のものを使用していました。古代の皇帝の中には、木彫りの龍座は長持ちしないと思い、黄銅に置き換える人もいました。表面は同じように金を塗って、金色に輝かせます。

 注: 髹(キュウ)は漆(うるし)を塗る意。器物に漆を塗ること。また、漆を塗った器物。

(翻訳・藍彧)