ジェニファー・ゼン(本名・曽錚)(YouTube動画のスクリーンショット)

 前の記事では12月末に中国の3つの研究所が、SARSのような新型ウイルスを確認し、病院と保健機関の両方に報告したこと、そしてある研究者が「重大な公衆衛生問題」が迫っていると警告したことについて言及した。

 この記事は今年1月に起きた事について紹介する。

 2020年1月1日、人々が元日を祝う中、武漢では不可解な事が多く起こった。まず、中共ウイルスの発生源とされる華南海鮮市場が封鎖されたが、従業員や動物に対しては検査が行われなかったそうだ。SARSの研究にも貢献した香港ウイルス研究の第一人者である管軼(カン・イツ)氏はその対応を批判した。彼は、1月21日と22日にウイルス発生源の調査をすべくチームと共に武漢に行ったが、結局何も出来ずに去ったそうだ。彼は後に「現場」がなければ何もできないと記者に話した。また、彼は新型コロナウイルスの感染力は、SARSの10倍以上かもしれないと警告した。

 同日、武漢市公安局が李文亮(リー・ウェンリャン)医師に「デマを広めた」として出頭を命じた。この2日後、李医師は「罪」を認め、以後は「違法行為」をしないことを約束する声明文書にサインした。他にも7名が同様の容疑で逮捕されており、その後の消息は分かっていない。

 またこの日、遺伝子配列の結果が出て、病院と保健機関に報告された後、ある遺伝子配列の研究をしている会社が、湖北省衛生委員会から新型ウイルスに関わる検査を即座に中止し、既存のサンプルを全て破棄するよう命じられたと言った。

 ニューヨーク・タイムズ紙が中国の携帯電話データを調査したところ、当日は17万5000人が武漢を離れた。さらに国際的な航空情報会社OAGによれば、21か国が武漢への直行便を運航しているそうだ。過去のデータを見ると、2019年の第1四半期には13,267人が武漢から米国へ渡航しており、1か月あたり約4,422人という計算になる。

 総合医学雑誌NEJMで発表された論文によると、1月1日~11日の間に、7人の医療従事者が感染し、1月12日~22日の間には8人が感染したそうだ。この論文の著者は中国疾病予防管理センターの研究者であり、論文から中国の専門家や研究者はウイルスが人から人へ感染することを当時すでに知っていたことが見て取れる。ヒトーヒト感染がないなら、医療関係者は感染していないはずだ。しかし、当時には誰も警告を出していなかった。

 1月2日に、中国科学院武漢ウイルス研究所がウイルスの遺伝子地図を作成したが、中共はその情報を隠蔽し、1週間後にようやく発表した。

 一方で、武漢ウイルス研究所の所長である王延軼(ワン・イェンイー)氏が研究員らに、国家衛生委員会からの電話内容を伝え、あらゆるメディアに対しても、ウイルスに関する検査や研究データ、結果などを開示することを禁止すると通達した。また同様に、SNS上での情報公開も禁止された。

 この日は、他にも奇妙な動きが見られた。当時は、この「原因不明の肺炎」のことを誰も知らなかったはずだが、武漢の海軍工程大学が封鎖通知を出し、関係者の出入りを厳しく管理し始めた。訪問者は入館許可と検温が義務付けられ、体温が38度を超える人は入場が制限された。これは中共が疫病流行を認める18日前で、武漢封鎖の21日前のことだ。なぜ軍事大学は早い段階でこのような措置を取っただろう?

 また同日、武漢中央病院の艾芬(アイ・フェン)医師が上司に呼ばれた。彼女は部署のグループチャットで「SARSの様なコロナウイルス」について言及したことがあったため、上司から非常に厳しい叱責を受けた。その後、彼女は精神的に参ってしまい、誰に何を聞かれても話さなくなってしまったそうだ。

 1月3日、中国国家衛生委員会は全ての機関へ、他の機関や個人に生物学的サンプルや関連情報を提供することを禁止する箝口令(かんこうれい)を発令した。既にサンプルを入手した者は直ちに破棄するか、指定の機関に引き渡すよう命じられた。武漢ウイルス研究所も例外ではない。

 同日、地元警察は再び李文亮医師を呼び出し、「デマを広めた」として懲戒した。時期同じくして武漢市衛生委員会が、「原因不明の肺炎が44例見つかったが、人から人へ感染する証拠はない」との通達を出した。

 そして、この日、シンガポール政府が武漢からの渡航客に対して、体温測定を行うことを発表した。また、上海の復旦大学の張永振(ジャン・ヨンジェン)教授もこの日に、武漢中央病院から輸送された生体サンプルを受け取った。

 1月4日、中国国家衛生健康委員会の専門家チームは、「現時点では人から人への感染の証拠は見つかっていない」と公言した。同日、香港がこの感染症への警戒レベルを「厳重」に設定した。中共当局が、ウイルスが人から人へと感染する可能性はないと主張し続ける一方で、香港大学感染症センターの何伯良(ホー・ボーリャン)総監は、「本土で数十人に感染した謎の新型ウイルス肺炎については、人から人へと感染が広がっている可能性が高いため、市は可能な限り厳格な監視体制を実施すべきだ」と警告した。

 1月5日、上海市公衆衛生臨床センターの張永振教授は新型コロナウイルスを測定し、このウイルスの遺伝子配列を上海衛生保健委員会及び中国国家衛生健康委員会に提供した。このウイルスがSARSに類似しており、呼吸器系統を通じて感染する可能性があると警告した。これをきっかけに、翌日、中国疾病予防管理センター(CDC)が緊急対応を始めた。同日、WHOは「2019年12月31日、WHO中国事務所が武漢市で原因不明の肺炎症例が確認されたとの報告を受けた」と発表した。また、この日に、武漢市衛生健康委員会はこの病気の症例についての情報更新を停止した。

 武漢市第五医院の呂小紅(リゥ・シャオホン)医師によると、1月6日から患者が病院に殺到するようになったと言った。1月10日には救急科と呼吸器科が既に患者でたくさんで、外来患者の受け入れが出来なくなり、その日以降、外来患者は他の科へと送られるようになった。尚、当時医療従事者は防護服を着用しておらず、患者は自由に院内を移動することが出来たために、感染が拡大したのだと呂医師は後に語った。

 同日、米国疾病予防管理センターは中国の感染状況に対して、レベル1の渡航規制(注意)を発令した。これは三段階中最低レベルだ。原因と感染経路がまだ分からないため、武漢への渡航者には動物や動物市場及び病人との接触を避けるよう注意喚起した。米国疾病予防管理センターは支援チームを中国に派遣して調査に協力すると提案したが、中国政府がそれを拒否した。その後、2月16日に、ようやく2人の米国人を含むWHOのチームが現地を訪れた。

 1月7日、ウイルスの告発者である李文亮医師本人への感染が確認された。この日は、習近平が自ら感染対応をリードし始めた日でもある。その間に、香港での感染者が30人となり、人々はマスクを買いに店舗などに殺到し始めた。

 1月8日、中国の衛生委員会は新型のコロナウイルスが原因で、武漢の病院の医療従事者の間で感染が拡大していることを認めた。しかし、中共当局と欧米メディアは「この新型ウイルスが人から人へと感染する証拠はなく、人の死に結びついていないことからも危険なものになるとは言えない」と繰り返して述べた。

 WHOは声明で「短期間で新型ウイルスを検出できることは驚くべき成果であり、中国の感染症に対する能力が向上した証拠でもある」と発表した。また、WHOは渡航者に対して具体的な要求はせず、中国に対する渡航や貿易を制限しないよう勧告した。

 またこの日、韓国で初めて感染疑い症例が確認された。

 1月9日、感染対応チームの徐建国(シュー・ジェングォ)氏は、2日前に作成した完全なウイルスの遺伝子配列から、そのウイルスが新型のウイルスであると認定したことを中国公式メディアに伝えた。また、WHOも武漢の状況に基づき、新型のコロナウイルスであると発表した。同日、北京大学の王月丹(ワン・ユェーダン)教授は香港のラジオ番組で、「2003年SARS発生時の状況と比較して考えると、この新型コロナウイルスは人から人へと感染する可能性が高い」と話した。

 1月10日、武漢に派遣された専門家チームはメディアに対して、「患者の状態と拡散状況から見ると感染は予防可能且つ制御可能である」と伝えた。同日、ニューヨーク・タイムズ紙は武漢市衛生委員会の「ウイルスが人の間で拡散する証拠はない」との声明を引用し、報道した。しかし、中国の医師らはこの政府の声明に反して、家族間などで交差感染が起きていることを発見した。

 また、中国ではこの日から旧暦のお正月の大移動が始まっていた。中国では毎年何億人もの人々が帰省し、家族と一緒にお正月を過ごすことだ。そのため、人々はよくこの現象を「世界最大規模の人間の大移動」と呼んでいる。この期間中は、ウイルスの発生地とされる場所から1キロ未満の武漢・漢口駅や他の主要都市など、いかなる場所でもウイルスの予防や対策が講じられていなかった。これがウイルスの大拡散に繋がっただろう。

 1月11日、中国衛生部門はWHOとウイルスの遺伝子配列を共有した。武漢では市衛生委員会の61歳男性が新型コロナウイルスにより死亡したことを発表した。彼は名前すらないウイルスの最初の被害者という。それでも、なお、中共は沈黙を続けた。

 そして、この日から7日間に亘って、2つの会議が武漢で開催された。これは「両会」と呼ばれ、湖北省人民代表大会と湖北省政治協商会議を指す。湖北省で最も重要な年次政治会議だ。しかし、この両会ではコロナウイルスについて全く言及されなかった。

 同じ日、武漢市衛生委員会は感染者数が1月3日の44人から41人まで減少したと報告した。また、「2020年1月3日以降、新たな症例は見つかっていない。現在、医療従事者の感染はなく、人から人へと感染する証拠もない」と発表した。両会期間中の7日間は、感染に関する新たな報告はなかった。実際、両会最終日の1月17日まで武漢での感染者数はずっと41人であり、1月3日以来増加していない。同時に、この時から、香港、ベトナム、シンガポール、タイ、日本、韓国などの近隣諸国で感染が確認され始めていた。当時、多くの中国人は「このウイルスは中国の他の省には行かずに湖北省だけに留まり、外国では感染が拡大しているので『愛国ウイルス』と呼ぶべきだ」と冗談を言っている。

 英国のある専門家が行った調査によると、当時少なくとも世界中では1700人以上の感染者がいたはずだと言った。つまり、両会中の「良い雰囲気」を維持するために、中共は意図的に感染者数を少なく公表していた。

 同日、張永振教授の研究チームはウイルスの遺伝子配列情報をVirologic.org(ウイルス専門の)サイトとGenBank(ジェンバンク、世界的な公共の遺伝子配列情報データベース)で共有し、世界で初めてウイルスの遺伝子配列を発表したチームとなった。このデータの公開は研究者がウイルスの検査キットを開発するのに役立ち、非常に重要な意味を持っている。

 しかし、翌日の1月12日、上海公衆衛生臨床センターにある張永振教授の研究室は「内部行革(ないぶぎょうかく)」のため閉鎖するよう命じられた。上海市公共衛生臨床センターは「今回の閉鎖は、研究員とその研究に大きな影響を与えた。彼らは一刻も早く今回のコロナウイルスを制御する方法を探しているところだった」と述べた。

 12月末の過ちが再び繰り返された。中共の無知や傲慢、或いは他の目的のために科学研究の情報開示がまたも抑圧された。その結果、今日の様な世界規模の災害を招いてしまった。この大きな災害は人類にとって何を意味しているだろう。

(つづく)

(文・曽錚/翻訳・「世界をみよう」チーム)