光を灯すことは、他人を助けるだけではなく、私たちの心も明るくするのだ。(イメージ:Pixabay CC0 1.0)

 地勢の関係で、私が住んでいる5階の寝室から20メートル程離れている丘の中腹に建つ平屋の住宅が見える。

 ある日の朝3時、その平屋の住宅の方から突然、若い女性の甲高い助けを求める声が聞こえ、私は夢から目覚めた。寝室の照明を点灯しようとしていると、妻が怯えながら私を引っ張り、「照明をつけないで!先ず、どういう状況になっているのか確かめて、後で報復されないように・・・」と言った。それで私は、妻と一緒に恐る恐るカーテンを開き、外を確かめた。すると、数人の悪党は既に向かいの平屋の庭に入り、ドアをこじ開けようとしていた。彼らはしばらく動き回り、周囲に反応がない事を確認し、ますます横暴になり、ドアを壊し始めた。残念ながら、私を含む周囲の人々は皆沈黙し、あの女性の恐怖の叫び声以外に、少しの音も聞こえなかった。

 悪党達がドアを壊し建物に侵入しようとした時、急に反対側の平屋の照明が点灯し、年配の女性が咳をしているふりをした。この僅かな光が、悪党達の動きを止めさせた。続いて、私の上の階の住人も勇敢に照明を灯したので、私も家の全ての照明を灯し、オーディオを最大音量にし、雄大な音楽で静寂を吹き飛ばした。

 徐々に、周囲の住宅の明かりが全て点灯し、時折、叱り声も聞こえた。悪党達は通りを横切るネズミのように逃げ出した。

 その後の日々に、私はしばしば、どきどきし高揚したこのシーンを思い出す。ほんの少しの光で悪党達を撃退することができたのだから、更に多くの機会に、我々が皆、勇敢に身を挺し、他人のために光を灯すことができれば、この世に悪が存在しなくなると私は思っている。光を灯すことは、他人を助けるだけではなく、私たちの心も明るくするのだ。

(翻訳・謝 如初)