今回インタビューを試みたのは、神奈川県逗子市の市議会議員である丸山治章氏だ。有名人の別荘を有することでも知られる港町・逗子市の議員である丸山氏は、スポーツ、造形、教育などを通じて地元の振興に関わるほか、外国人とも行動を共にするなど、市議会議員の枠を超えた活動も行っている。丸山氏の活動だけでなく、その背景にある信念について同氏の口から本心を聞いていきたい。

丸山氏は、自らに課された政治家としての責務、そして日本人としての責務をどのように捉えているのか。今回は丸山氏がこれまでに携わってきた活動についてお届けする。

看中国記者(以下「記者」)丸山先生は逗子市の市議会議員でありながら、現在は幼稚園での造形講座・体操講座や、学習塾の運営など、様々な活動に取り組んでいますね。また、過去にはボランティア活動も多く経験されたとのことです。そんな丸山先生が、なぜ市議会議員を目指すことになったのですか。

丸山氏家系を辿ってみたところ、私の義父の先祖は、鎌倉時代に源頼朝の勧請により水軍として伊勢から逗子市小坪に移り住んだ一族です。江戸時代には、小坪村に「浜名主」という役職が置かれ、今でいうところの市長のような役割だったようですが、義父の先祖は、200年に渡り代々「浜名主」を務めていました。

義父の草柳ひろしは、名字帯刀を許されてから13代目になりますが、逗子市の市議会議員を務めていました。お話ししたような義父のルーツと、義父から受けた影響によって議員を志すようになりました。

また、以前から人と関わるのは好きでした。私は地元のPTA会長を長年務めていたのですが、そのときに知り合ったお子さんが大きくなって、挨拶をしてくれたりすると嬉しくなりますね。

記者:PTA役員などのボランティアを引き受ける意義を教えてください。

丸山氏:困っている人が目の前にいたら助けてあげたい、という気持ちだけでやってきました。私はアニメや漫画に影響を受けて育った世代なので、「勇気」や「正義」を体現したヒーローに憧れがあるのかもしれません(笑)

日本人は他人に無関心な人が多いと感じますが、日本人の大問題であると思います。マザー・テレサも言うように「愛の反対は無関心」です。

いわゆる「日本人的な美徳」というのは、実は古代に海外(アジア)から入ってきた道徳観がそのルーツにあります。ですから、現代の日本人が失った心のありようというのは、歴史に学ぶことで取り返せるのではないかと思うのです。

150年前の明治維新にしても、当時の日本では薩長は敵同士で、互いに殺し合いをするほど争っていましたし、各々が軍隊すら持っていました。鹿児島県と山口県の抗争という次元でなく、国対国の戦争だったのです。しかし、最後には手を取り合うことができた。聖徳太子ではないですが、無から有を作り出し、外部からの意見を取り入れ、国難を乗り越えたわけです。

記者:現代の紛争に対しても「日本人的美徳」は役に立つのでしょうか?

丸山氏:例えば共産党政権の中国のような「目に見えないものを信じない」国に対して「日本人的美徳」を声高に叫んだとしても、「お前はお人好しか」と言われるだけで話になりません。

記者:先生が取り組んでいる中国の臓器狩り問題についてお聞かせください。

丸山氏:私が生まれ育った町・神奈川県藤沢市は外交官・杉原千畝(注1)が生まれ育った町で、近くには杉原の墓があります。私は縁あって、今年の1月、カナダの人権派弁護士・デービッド・マタス氏と、ジェイコブ・ラヴィ―医師と共に杉原の墓参りをしました。

(注釈1:第2次世界大戦時にユダヤ人難民に対して、ドイツとの同盟関係や外務省の訓令に反して、国境超えのためにビザを発行した外交官)

2018年1月、カナダの人権派弁護士・デービッド・マタス氏と、ジェイコブ・ラヴィ―医師と共に杉原の墓参りをする丸山議員

記者:デービッド・マタス弁護士とジェイコブ・ラヴィー医師といえば、中国で大きな人権問題となっている臓器移植手術に関する調査を手掛ける第一人者ですね。

スピーチするラヴィー医師

丸山氏:私もその時知ったのですが、ラヴィー医師の義父はリトアニアのカリウス出身(杉原が駐在していた場所)で、その後パレスチナに移民したため難を逃れることができました。一方で、医師の他のご家族は不幸にもナチスによって虐殺されてしまったそうです。

丸山氏:ラヴィー医師は「日本人には杉原の魂が宿っていると感じる。どうか皆さんも他人に対する同情心を持ってほしい」と熱心に語られていました。

記者:ナチスが行ったホロコーストという人権弾圧が、現在は「臓器狩り」に姿を変え、いまだに行われているというのは恐ろしい話です。

丸山氏:私自身は、「今行われている人権弾圧をやめさせたい」という気持ちで活動しています。先ほど紹介したような知識人だけでなく、過去に偶然知り合った中国人の方からも医療ツーリズムの実態を聞いていたのです。

その方(Aさん)とは、私が何かの用事で参議院議員会館を訪れた際に出会いました。Aさんはたった一人で、写真を手にし、「仲間を助けてほしい」と訴えていたものですから、これも何かの縁と思い私の方から話しかけたのです。その場で、Aさんから中国共産党による非人道的行為について聞いた私は、互いに連絡先を交換しました。それをきっかけに私自身もこの問題について勉強し、やがて危険な「医療ツーリズム」を止めるための活動を共にするようになったのです。

Aさんは入国管理局に対して難民申請を届け出ていたのですが、ある日のこと、その申請が却下され、Aさんが収監されてしまったことを知りました。すぐに知り合いの国会議員や弁護士に相談を持ち掛けたのですが、救出の手立ては見つかりません。結局、唯一明らかになったのは、私が身元引受人になることでAさんを解放できるということでした。

記者:中国や日本の政府機関からの反応はありましたか?

丸山氏:中国大使館からは特に何もコンタクトはありませんでした。もちろん日本の入国管理局からは根掘り葉掘り聞かれましたけどね(笑)。最後には私が身元を引き受けることで特に問題はありませんでした。

その後も、Aさんに代わって絵画の展示イベント会場を抑えたり、医療ツーリズムに関する映画の上映会を逗子市で開催したりしました。逗子市の公民館は、逗子市市民にしか使用許可を出しませんからね。

記者:先生のご家族から反対は声はあったのでしょうか?

丸山氏:家族には「自分はいつ死ぬか分からない」と言っているので大丈夫です(笑)。それに、Aさんや仲間の方も良い方ばかりだったので、私には何の心配もありませんでした。

また、いち政治家として申し上げれば、高齢化社会を迎える日本では臓器移植の需要は高まる一方です。臓器移植や移植ツーリズムに関する法整備については、市議会議員としても無関心ではいられません。

記者:「移植ツーリズム」のどういった点が問題なのでしょうか?

丸山氏:日本人が知らずの間に犯罪に加担してしまう可能性がある点です。移植ツーリズムにおける臓器の提供元は「良心の囚人」であると言われています。つまり、中国本土で共産党から「邪教の信者である」と認定された人々が、その意に反して臓器を提供せざるを得ない状況に置かれているということです。

仮に、中国で臓器移植手術を受けた日本人がいるとして、その方が、自分が提供された臓器にそのような犠牲があったと知った場合、どのように感じるでしょうか?人道的に問題のある医療行為に加担したことを後悔すると思いませんか?

その他、私は地方自治法第99条に基づき、適切な臓器移植の環境整備を求めるべく、逗子市議会において国会に対する意見書を作成し、その採決を主導しました。また、ほかの自治体でも同意見書の採決を推進するため「SMG地方議員ネットワーク」で活動を行っています。

とにかく、私は多くの日本人に「中国でひどい目に遭っている人がいる」ことを知ってほしいのです。日本人が無関心から目覚め良心を発揮することを、私は心より願っています。

(今野秀樹)

2018年8月5日に内容を修正しました。

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