(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 米国政府は、人民解放軍と直接的な関係を持つ中国籍の留学生及び研究者のビザを取り消し、強制送還することを計画している。アメリカメディア「ボイス・オブ・アメリカ」が5月29日報じた。

 報道によると、米国政府は、中国当局が大学院生や研究者を利用して米国の機密技術や知的財産権を窃取することを米国の国家安全保障に対する脅威とみなしている。推計ではこの政策により約3,000人が影響を受けることとなる。

 事件の発端は、FBIが1月に葉燕青(音訳:Yanqing Ye)という中国人留学生に対し令状を発したことまでさかのぼる。葉燕青はボストン大学の学生であり、中国人民解放軍の指示を受けて情報収集をしていた疑いがもたれている。FBIによると、葉燕青は中国国防科学技術大学に在籍した経緯を持ち、中国人民解放軍では中尉の階級だった。さらに、ボストン大学に在籍している間、中国人民解放軍から継続的な任務を受けていたとされ、その内容は米軍のウェブサイトの調査、評価、及び米国の文書と情報の中国への送信などが含まれているという。
 
 現在のところ、中国政府はこの件について詳しい説明をしていない。一方、在米中国大使館は5月30日、公式サイトで「政策の条件に合った」学生が帰国できるよう手配したと発表した。また、この発表には、出国時に米国税関による電子機器の検査について注意喚起をしている。

 ニューヨーク・タイムズ紙によると、米国には約36万人の中国人留学生がいる。この政策が実施されれば、これはアメリカが過去数十年来始めて中国からの留学生を追い出すこととなる。
 
 英国メディアBBCは、中国国内には人民解放軍と密接な関係にある大学が複数あると報じた。その中には、北京理工大学、北京航空宇宙大学、ハルビン工業大学、ハルビン工科大学、西北工科大学、南京航空宇宙大学、南京理工大学など、中国の有名大学が多く含まれており、40以上の高等教育機関が該当する。

 中でも、中国国防大学と国防科学技術大学は、中国共産党中央軍事委員会(中国共産党軍の実権を握る機関)の管轄下に置かれている。

 中国人民解放軍と密接な関係にあるこれらの大学も「ビザ政策」の範囲内かどうかは不明だ。しかし先週、米商務省はハルビン工業大学とハルビン工科大学を、許可なしに米国の技術を輸入することを禁止する「エンティティリスト」に加えた。

 実際、米連邦捜査局(FBI)と米司法省は、科学研究分野の中国人留学生が米国の安全保障上の脅威となる可能性があると繰り返し警告してきた。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、トランプ政権が過去3年間に中国人留学生のビザを制限することを検討したことがあると、米政府関係者の発言を引用している。 また、米国務省は2018年から、センシティブな分野で働く中国人大学院生のビザ有効期間を1年に制限した。

(看中国記者・黎小葵/翻訳・藍彧)