明人十八学士図(國立故宮博物院・台北 / パブリック・ドメイン)

(二)
他人に金銭を施すことは難しくないかも知れませんが、自分の財産に損害を与えた人に優しくすることは、誰にでもできる事ではありません。

 お金が見つかっても、それを認めない

 張知常が太学(古代の教育体系においては最高学府にあたり、官僚を養成する機関である)にいた頃、家族は人に頼んで彼に十両のお金を届けました。同じ寝室の者が張知常が留守をしている間に、彼の箱を開けお金を盗みました。管理人は同じ寝室の人を集めてお金を探させました。すると、お金が見つかりました。しかし張知常はこの時なんと、「これは私のお金ではない」と認めませんでした。

 お金を盗んだ同じ寝室の人は、夜にこっそりとお金を張知常に返しました。それを知った張知常は、彼がとても貧しいことを知っているため、お金を半分彼に分け与えました。その後、人々は皆、「人にお金をあげることは、他の人でもできることですが、お金が見つかっても、自分のものだと認めないことは、誰もができることではない」と張知常を称賛しました。

 泥棒を良民に変えさせた

 曹州の于令計はもともと普通の平民でした。彼は正直で温厚な性格をしており、他人の利益を損なうことは決してせず、晩年はとても裕福な暮らしをしていました。ある夜、彼の家に泥棒が入りました。息子達が泥棒を捕まえると、近所の子だと分かりました。于令計は泥棒に、「おまえは普段悪い事をしない子なのに、どうして泥棒をしたのか」と聞くと、 その子は「家が貧し過ぎて仕方ありません」と答えました。そこで、于令計は彼にどのくらいのお金が必要かと聞くと、その子は「1万銭があれば、十分な食べ物と服を買えるから」と言いました。于令計は彼が言った通りのお金を与えました。その子がお金をもらって帰ろうとした時、于令計はまたその子を引き留めました。その子はとても怖くなり、于令計が後悔して自分を通報するのではないかと思いました。

 しかし、于令計はその子に「おまえは貧しいのに、1万銭を持っていると、夜のパトロールの者に取り調べられたら困るであろう」と言って、彼を夜が明けるまで家に引き留めました。泥棒は非常に恥ずかしくなって、ついに足を洗って良民になることを決心しました。郷里の人は皆、心優しい于令計を褒め称えました。于令計はまた学校を作り、優秀な子供を選び、有名な先生を要請して教えさせました。そして、彼の息子と甥の于傑効も相次いで科挙に合格し、彼の一家は曹州南地域で名家になりました。これも彼が善事を行なうことによって得た福報でした。

(つづく)

(明慧ネットより転載)