(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 ある疑い深い男は、周りの人が皆自分の悪口を言っており、自分のことを好きな人は誰も居ないと感じていた。

 男は短期間お寺に宿泊し、心身の安らぎを得ようとしたが、なかなか他人に対する疑念を抑えることができなかった。

 このお寺の裏には池があり、毎晩カエルの鳴き声が聞こえた。他の人であれば「これは神様からの天の恵みだ!」と思うのかもしれないが、この男には「恐ろしい騒音」に聞こえ、その鳴き声のせいで毎晩どうしても眠れなかった。

 ある日、カエルの鳴き声で眠れない男は、真っ直ぐお寺の中庭まで走ってくると、様々な思いが入り乱れ「なぜいつも私は運が悪い?なぜ周りの人達は私の悪口を言うのが好きなのだろう?」と考え続けた。

 その時、お寺の住職が現れて「なぜこんなに遅くまで起きているのですか?」と男に尋ねた。男は怒りながら「この池にいるカエルのせいだ。カエル達がうるさくて死にそうだ!」答えた。

 お寺の住職が「あなたは、この池には何匹のカエルがいると思いますか?」と尋ねると、男は「500匹以上は居るでしょう!そうじゃないと、こんなにうるさい騒音を立てることができません!」と答えた。

 住職は「そうですか?それではあなたにお願いがあります。この池にいるカエルを全て捕まえて他の場所に移して頂けないでしょうか?」と男に頼んだ。

 男は困った顔をして「こんなに多くのカエルを全部捕まえることはできませんよ!」と言うと、住職は「できる限り捕まえて下さい」とお願いした。それで次の夜から、男は真剣にカエルを捕らえる罠を仕掛け始めた。

 すると、まだ2日間しか経っていないのにカエルの鳴き声が聞こえなくなった。

 住職は男に「今、池にはもうカエルが居ない様です。きっと、この2日間でたくさんのカエルを捕らえたでしょうね?」と尋ねると、男は「御住職、正直に言うと2匹しか捕まえていないのです」と答えた。

 住職は驚いた顔で「2匹?そんな訳がないでしょう?池には500匹以上のカエルがいると仰っていましたよね」と言うと、「いいえ御住職、今回、私は間違っていました。カエルが500匹以上居ると思ったら、たったの2匹だけでした」男は恥ずかしそうに答えた。

 「あっはは!そうだったでしょう」住職は男の肩を叩いて「あなたを批判する人達もこのカエルと同じでしょう?私達は自分が気に食わない話を大袈裟にする習慣があります。」と笑った。

(文・黄桐/翻訳・謝 如初)