左:2022年8月水位が急激に低下した中国最大の淡水湖である鄱陽湖の様子、右:2008年四川大地震により被災した建物(看中国合成写真)

 三峡ダムと長江流域の乾燥・高温との関係について、中国の水利専門家の見解をこのほど連続的に報じました。三峡ダムが長江流域の干ばつや高温の原因であることは理解できるが、なぜ今年が特に最悪なのかと、読者の方からコメント欄で質問を頂きました。

 中国は、歴史的記録の連続性が最も優れている国であり、地震の記録の保存と連続性が最も優れている国でもあります。中国の地震専門家である耿慶国(こう・けいこく)氏が、大量の歴史的資料を研究した結果、地震と干ばつには高い相関関係があり、大地震の前にはしばしば大干ばつが発生することを発見しました。耿氏が確立したこの地震予知法は「干ばつ地震予知法」と呼ばれています。

中国の地質学者、地震学者である耿慶国(こう・けいこく)氏

 例えば、中国で記録された最古の地震は2700年以上前の周原(しゅうげん)大地震であり、その数年前には大干ばつが発生しました。1556年に陝西省華県(かけん)を襲ったマグニチュード8.2の大地震は、地震の前年に華県を中心とする秦嶺山脈一帯が大干ばつに見舞われていました。また、1737年の秋には、寧夏で40日以上にも及ぶ大干ばつが発生し、その2年後、寧夏の州都である現在の銀川市(ぎんせんし)にマグニチュード8の大地震が起きました。

 しかし、すべての干ばつに地震が付きまとうわけではありません。マグニチュード6以上の地震では、地震の前1年から3年にかけて震源域で干ばつが発生する可能性が高く、しかも、地震の規模が大きくなればなるほど、干ばつになる地域は広くなると、耿氏は考えています。同氏によれば、大地震の前の高温と干ばつは、地殻の変化で放出された地下熱の結果です。1980年代、耿氏は地震と干ばつの関係についての研究をまとめ、「中国で干ばつと地震の関係における研究」というお題の本を出版しました。残念ながら、この本の内容は、中国の地震学界の同業者には受け入れられなかったのです。

 耿氏は、地震予知に関する研究で多くの成功を収めました。例えば、1975年の遼寧省海城(かいじょう)地震や1976年の河北省唐山(とうざん)地震を見事に予知しました。さらに、2008年の四川省汶川(ぶんせん)地震も予知しました。これらの地震が発生した地域では、地震の前に干ばつが発生していました。

 2006年、耿氏は中国地震局に「2008年5月から2009年4月までの1年間に、四川省アバ地区でマグニチュード7以上の地震が発生する可能性がある。最も危険な時期は、2008年5月8日の前後10日間」という内容の手紙を届けました。これは、耿氏が自らの年金を投入して行った地震研究の成果でした。しかし、この手紙は中国地震局の幹部に重視されませんでした。

 2008年5月12日14時28分(日本時間15時28分)、四川省アバ・チベット族チャン族自治州汶川県を震源とするマグニチュード8.0の地震が発生しました。同地震で8万人近くが亡くなり、4600万人が被災しました。

 では、今年の長江流域の干ばつは、今後数年以内にこの地域で大地震が発生する前兆なのでしょうか。今現在、この件に関する耿氏のコメントは得られていません。

(翻訳・徳永木里子)