黄明志と陳芳語がデュエットするこの曲「玻璃心」は、2021年10月にリリースされ、すぐさま中華圏で話題沸騰した。(YouTube動画のスクリーンショット)

 台湾最大の音楽賞「第33回金曲賞(ゴールデン・メロディー・アワード)」の流行歌部門年度歌曲賞に「玻璃心(ガラスの心)」がノミネートされた。

 マレーシア人歌手のNamewee(黄明志)さんと華人歌手のキンバリー・チェン(陳芳語)さんがデュエットするこの曲「玻璃心」は、2021年10月にリリースされ、すぐさま中華圏で話題沸騰した。

 2022年6月19日現在のYouTubeでのミュージックビデオの再生回数は、5725万回以上を記録している。

 軽快なリズムのこの曲を、黄明志さんは「ラブソングです」とコメントしたが、ミュージックビデオはピンク色(未熟な共産主義者の意)を基調として撮影し、その歌詞や小道具にもニラ、コウモリ、パイナップル、コットンなど共産党治下の中国を辛辣に揶揄していると思われるものが使われている。

 ・ニラ:中国SNSでの流行語「割韭菜(ニラ刈り)」~収穫しては伸び、又すぐに収穫される事から「庶民は刈られるニラでしかない」と中共幹部と庶民の関係性を表す皮肉。

 ・コウモリ:中共が発表したの新型コロナウイルスの発生源

 ・パイナップル:中国は、2021年3月から台湾産パイナップルの輸入を禁止

 ・コットン:強制労働により新疆綿を生産

 この曲がリリースされた直後、Nameweeさんとチェンさんの作品は、中国本土の全てのプラットフォームから削除された。更に中国SNS「ウェイボー」の二人のアカウントも削除された。

 Nameweeさんは、今回のノミネートに対し、フェースブックに「《玻璃心》をリリースして24時間も経たないうちに、僕の全ての作品は、中国本土で全面的にブロックされ、SNSアカウントも一夜にして全て削除されました。これは、一歌手にとっても、プロダクションにとっても、非常に大きなダメージでした。しかし、よく比べてみたら、最もダメージを受けたのは僕達ではなく、長年、自由に歌を聴くことも、自由に映画を見ることも、自由にインターネットにアクセスすることも、自由に話すことも、自由に文字を打つことも、自由に食事に出かけることさえできない中国の人達だと気付いたのです…」とコメントした。

 Nameweeさんは続けて「この曲とミュージックビデオに携わった全てのスタッフの皆さん、そして、この曲を気に入って、コメントして、シェアして、動画まで作って応援してくれた世界中の皆さん、本当に有難うございます。そして何より、この曲を一緒に歌ってくれたキンバリー・チェンさんに心から感謝しています。チェンさんがいたからこそ、この曲が生まれたのです。彼女の歌声は本当に素晴らしいです!」と、チェンさんとスタッフ、そして動画の視聴者に対し、感謝の意を表した。

 自身のオリジナルアルバム『鬼才做音楽』が、ベスト・デコレーション・デザインにもノミネートされたことに対し、Nameweeさんは「プレッシャーと困難に負けずに頑張れば、いつかスポットライトを浴びて輝ける日が来ると信じています!」とコメントし、「今回は2つもの賞にノミネートして頂き、金曲賞の審査員の皆様に感謝します。さらに台湾の民主主義と自由に感謝します。そして僕を応援し続けて下さったファンの一人ひとりに感謝します。台湾、すぐに行くよ~!」と気持ちを綴った。

 「金曲賞」は「中華圏のグラミー賞」とも呼ばれ、中華圏の音楽シーンに絶大な影響力を有する、最も栄誉のある賞だ。第33回金曲賞授賞式は2022年7月2日に台湾南部・高雄市で開催される。

(翻訳編集・常夏)