習近平総書記と李克強総理(パブリック・ドメイン)

 中国共産党(以下、中共)の機関メディア新華社通信と人民日報が14日、同時に李克強首相の経済政策に関する8000字以上の記事を掲載し、注目を集めた。

 反習派の現在の最優先事項は、習近平氏の再任への道を阻むことであるため、第20回党大会の前に、習氏の権力喪失と李氏が率いる派閥(共青団派)の台頭という噂を絶えず流していると、分析する人がいる。こんな背景の中で、李克強氏が14日に、突然公式機関メディアに登場した。新華社通信などは、4月25日にの国務院第5回廉政(クリーンな政治)作業会議での李克強氏の演説を報じた。人民日報は、2ページ目をまるまる使って、同演説を掲載した。

 「六四天安門事件」の指導者である王丹氏は15日、ユーチューブの「王丹評論」というチャンネルで、李氏の4月25日の演説がかなり稀だと述べた。中共の場合、数週間後に過去の演説を掘り起こすには、背後に必ず論争があったに違いない。さもなければ、その時点で掲載されたはずだ。演説内容は、李氏のこれまでの表現とは確かに相反している。8000字余りの演説テーマは「クリーンな政治」だったが、実際の内容のほとんどは経済に関するものであった。しかし、経済問題を言っているようだが「経済だけの問題ではなく、社会の安定の問題でもある」と発言した。これは、経済問題が今や政治問題になっているという態度を示していることを表明したに等しく、常に慎重で控えめな李氏にしては実に稀なことであった。

 王氏はまた、李氏がここ2週間の複数の会議で、雇用問題を特に強調したことに言及した。地方債務などの中国の多くの経済問題は、雇用問題ほど社会の安定と政治的安全に直接影響を与えていない。李氏は雇用危機を明確に強調することで、経済問題の深刻さを指摘し、習氏の経済的決定への批判を暗示しているようだ。しかし一方で、李氏の習氏に対する批判はあくまで経済面のみ向けられており、その目的は政治的地位ではなく、彼の経済的支配を取り戻すことに他ならないと、王氏が考えている。

 米紙エポックタイムズ(Epoch Times)の時事評論家である鐘原氏の分析によると、李氏が中国の両会「全国人民代表大会(全人代)、人民政治協商会議(政協)」開催期間中、政府の業務報告を発表する際、記者の質問に答える場合にのみ、中共メディアに大いに報じらる扱いを受けることができる。李氏が主宰する国務院常務会議でも、彼の発言はしばしば省略されており、今回のように大きなスペースを使用して報道されることはめったにない。

 鐘氏は、新華社通信と人民日報が突然李氏の演説全文を掲載したことで、李氏の発言力が増し、党内での地位が実質的に高まったと考えている。習氏の再任の行方や李氏がどんな役割を演じるのか、情勢を複雑化している。

(翻訳・徳永木里子)