カナダ連邦裁判所(Jeangagnon, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons)

 カナダ連邦裁判所は1月、中国国務院僑務弁公室が「カナダの利益に反する」諜報活動に携わっている疑いがあるとして、同弁公室の元幹部と妻の移民申請を却下した。

 裁判所の判決によると、中国国籍の張勇(Yong Zhang)さんと妻の高玉霞(Yuxia Gao)さんは、帰化した娘の保証で家族の団らんを理由に移民を申請したが、カナダ移民局は、張さんは僑務弁公室に20年間勤務し、高級幹部だったことを理由に申請を却下した。

 カナダの法律では、スパイ活動に関与しカナダの国益に損害をもたらす組織のメンバーの移民を禁止している。移民局は、僑務弁公室はこの法律の規制対象に該当すると判断した。

 却下された後、同夫妻は連邦裁判所に司法審査を求めた。ヴァネッサ・ロチェスター連邦判事は、得られた証拠を踏まえて、中国国務院僑務弁公室がスパイ行為に関与したと結論づけるのは合理的であり、カナダ移民局の決定に問題はないと述べた。僑務弁公室が「カナダの利益に反する」スパイ行為を行ったと信じるに足る理由があると述べた。

 張さんの申請を却下した入国審査官は、「公開されて信頼できる情報によると、僑務弁公室は世界中の中国人コミュニティに対して秘密行動を取っている。そのため、(それらの秘密行動には)カナダとその同盟国の中国人コミュニティが含まれると見なされる。そのような行為は、カナダの利益に反すると考えられる」と述べた。

 裁判所は「僑務弁公室は情報収集に従事する方法は隠蔽的であると合理的な結論を出すことができる。表向きは中国人の権益を維持・保護・向上している」ようだが、本質的には「中国共産党政権の正当化、国際イメージの維持、国際社会の経済・政治資源への獲得を通してその影響力を維持しようと努めている」と指摘した。

 カナダ紙「ナショナル・ポスト」によると、駐中国カナダの元外交官、チャールズ・バートン氏は、僑務弁公室が明らかに長い間、カナダにいる中国人に影響を与え、監視する努力をしてきたが、カナダ当局がその名前を公に指摘することはめったにないと述べた。同氏はまた、カナダ安全情報局(CSIS)と警察機関は、そのような中国共産党組織について、政府に助言したが、政治家はカナダと中国の貿易に損害を及ぼすことを恐れて、それらの声を黙らせてきたと指摘した。

(翻訳・徳永木里子)