中国経済はコロナ禍で不況に陥って、多くの地域で住宅価格が大幅に下落し、多くの中国人の所得も減少したため、新年早々、不動産市場の住宅ローン破綻の波が来たという噂が業界内で流れた。

 中央財経大学の韓復齢(かんふくれい)教授は14日、ウェイボー(微博、Weibo)で、1月にすでに20万人の住宅所有者が物件を放棄し、住宅ローンの返済ができないなどの理由で、中国工商銀行、中国農業銀行、中国銀行、中国建設銀行など4つの大手銀行に提訴されたと明らかにした。翌日、韓氏は河南省鄭州市の弁護士が投稿したスクリーンショットを掲載した。当該弁護士は、住宅ローン破綻の案件があまりにも多くて、弁護士書簡(ローヤーズレター)を毎日たくさん出しているという。

 不動産の住宅ローン破綻の波について、中共当局は17日まで、何の声明も発表していない。しかし、1カ月前、中国不動産市場史上最大の住宅ローン破綻の波が、すでに来ていると中国のメディアが警鐘を鳴らしていた。コロナ禍で失業者が急増し、昨年12月にはすでに多くの中国人が住宅を手放していた。

 北京周辺の河北省張家口市で最近、多くの住宅購入者が住宅ローンの支払いを打ち切ったという噂がインターネット上で話題となっている。チャット記録によると、張家口市の住宅価格は50%も落下し、1平方メートルあたり約21万円(1.2万元)の高値で購入した物件が1平方メートルあたり約10万円 (6000元)でも売れなくなり、多くの住宅所有者が率先して住宅ローンを打ち切ったということである。 ある住宅所有者によると、彼の建物では十数世帯が住宅ローンの支払いを打ち切ったと明らかにした。

 中国メディアの報道によると、河北省三河市燕郊鎮の住宅所有者が、2017年に約5300万円(300万元)の価格で、ローンを組んで住宅を購入した。しかし、商売不振で住宅ローンの支払いが滞り、自宅は裁判所から約1600万円(90万元)あまりの価格で競売にかけられた。競売のお金を銀行に返済した後も、約1780万円(100万元)以上の借金が残っている。それまでの頭金と月々の支払いで、約4450万円(250万元)を損失し、結局何も手に入らなかったのである。

 また、河南省鄭州市でレストランのシェフや学習塾の国語教師として働く夫婦を中国メディアが取材した。2人はもともと中流階級の家庭だったが、コロナと「双減(そうげん)」政策(注)の二重の影響で、2人とも職を失い、住宅ローンの返済ができなくなったという。昨年10月、夫婦は銀行からローン返済の通知が届き、返済ができないなら、銀行が差し押さえて競売物件として強制売却されると告げられたのだ。結局、返済ができなくなり、家が差し押さえられるのを夫婦で見届けた。家が差し押さえられたという知らせに、「人は一瞬にしてぶつれるものだ」と感じたとメディアに語った。

 韓氏は、中流階級の家庭は住宅ローン破たんが出れば、悲惨な結果になるという分析をウェイボーで発表した。例えば、もともとやく3560円(200万元)でローンを組んで住宅を購入した物件は今、失業したため、住宅ローンの返済ができなくなり、家を手放すしかない。結局、それまでの頭金と月々の支払ったローンが全部損失し、家もなくなり、銀行に競売かけられるが、安い価格で売却されるため、売却したお金を銀行返済した後も数十万元の借金が残っている。さらに利息、弁護士費用、違約金、事件処理費などを負うことになる。また、銀行は所有者名義の全財産を凍結し、借金を踏み倒す人としてマークし、ひいては、元の所有者が将来就職した場合、融資と引き換えに元の所有者の給与を取る可能性もある。住宅ローン破たん後、家だけでなく、人生そのものを失うことになると、韓氏が述べた。

 アリババプラットフォームの抵当流れ物件に関するデータによると、全国の抵当流れ物件の掲載数は、ここ4年間で187倍近くに急増していることが明らかになった。2017年、中国の抵当流れ住宅の数は9000件だったが、2021年12月中旬には168万件を超えた。 投資用としてローンを組んで不動産を購入した多くの人にとって、今所有している不動産はすでに「負の資産」となってしまっている。物件を維持するために必要な住宅ローンの支払い総額が、現在の物件価値を大きく上回っている。

 注:「双減」とは、小中学生の宿題を減らし、学習塾などの学校外教育の負担を軽減するというものだ。双減政策に従い、中国当局は学校外教育機関の取り締まりを強化している。

(翻訳・徳永木里子)