習近平総書記(中央軍事委員会主席) は4日、軍に対する今年の1号命令に署名し、今年の軍事訓練の開始を発表した。過去2年間に比べて内容は短縮された。

 中国共産党(以下、中共)の慣例によると、新年後の1号軍事命令は通常、その年の軍事訓練を開始しうる命令であり、中共指導者が内部で軍に対する権利を示す方法である。中共軍は親衛隊であり、その主な任務は国ではなく、中共指導者を守ることである。中共指導者は、軍事クーデターを最も恐れており、無許可の大規模な動員は、災害救援活動への参加を含め、危険信号と見なされる可能性がある。

 過去2年の第1号軍令はいずれも、軍全体が「習近平の軍を強化する思想を実行し、新時代の軍事戦略を実行する」必要があることを強調した。しかし、同様の内容は2022年に消えた。冒頭に「党中央委員会と中央軍事委員会の決定指示を実行する」ことを強調している。

 時事評論家の沈舟氏によると、これは2022年の中国共産党軍の主な目標はもはや「軍を強化する」ことではなく、新しい「指示」であることを示している。内容の大幅な削減は明らかに意図的なものであり、おそらく新しいテーマを薄めないように新しい内容を際立たせるためであるだろう。

 2021年の1号軍令では、「戦争の準備に集中する」、「戦争で訓練をリードし、訓練で戦争を促すことを堅持する」、「軍事闘争の最前線での訓練を強化する」、「戦争の準備と戦闘態勢をタイムリーに確保する」。2022年の1号軍令では、同様の言葉が消え、「国家の安全と軍事闘争の情勢の変化を正確に把握し、科学技術・戦争・敵の変化に注意を払う」「軍事訓練の変革とアップグレードを全面的に推進する」「懸命的・科学的・安全的な訓練」「20回党大会の勝利開催」を迎えることなどに置き換えた。

 沈舟氏は、2022年の中共軍の主な任務は、もはや対外的なものではなく、対内的なものとなり、つまり第20回党大会で習氏の再選を成功させることであると分析した。これが2022年の新しい「闘争の情勢の変化」であり、後に続く「戦争と敵の変化」は補足説明と見なされる。20回党大会を強調するために、2022年1号軍令はその後の内容を意図的に省略したという。

 過去2年の軍令で具体的な訓練を指導する内容が、今年は全部消えた。「軍事訓練の変革とアップグレードを全面的に推進する」、「懸命的・科学的・安全的な訓練」という内容で概括した。

 これらのフレーズは基本的に訓練を指導する上で何の役割もない決まり文句であり、おそらく最後の段落の「安全な訓練」だけが何らかの意味を持つ、つまり、訓練事故がないことが要件であると、沈舟氏が考えた。これは、過去の訓練で安全面に大きな問題があったことを示している可能性がある。20回党大会を成功に開催するため、これ以上の訓練事故は許されない。そのため、草の根軍は訓練の強度を下げ、訓練を形だけのものにする可能性がある。また、感染のリスクを防ぐために集団訓練を減らす可能性もあり、いわゆる「軍事訓練の変革とアップグレード」を主張する可能性がある。

(翻訳・徳永木里子)