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 オミクロン株は2022年初頭に、世界各地で猛威を振るっている中、極端な予防措置「ゼロコロナ政策」を実施している中国も8日に、天津市で初の感染者が報告された。 オミクロン株は、中国共産党(以下、中共)に4つの深刻な打撃を与えることになると指摘するアナリストがいた。

 オミクロン株は天津に現れ、北京に波及するのは時間の問題だ

 北京からわずか115キロメートルしか離れていない天津市では8日、新型コロナウイルスのオミクロン変異株の市中感染が初めて報告された。同市では約1,500万人の住民全員を対象とした大規模なPCR検査が開始された。

 香港大学のウイルス学者である金冬雁教授は、国境管理でオミクロンの拡散を完全に封鎖することはほぼ不可能であるため、港である天津市でのオミクロンの発生はある程度予想されたとCNNに語った。オミクロン株は、デルタ株よりも拡散速度が速く、ウイルス負荷量が低く検出されにくいため、天津市が全市の検査を完了しても、市中感染のすべての症例を確認できない可能性があると指摘した。

 天津から北京までは高速鉄道で30分しかかからない。2月4日の北京冬季五輪の開幕を確保するため、北京当局は9日、北京と天津の住民が必要がない限り両市の間を往来しないよう、両市間の通勤者は自宅で仕事をするように、と要求する関連通知を発行した。しかし、当局の公式発表によると、北京と天津間の列車を利用する1日あたりの平均乗車人数は4万人だという。したがって、オミクロン株が北京に広がるのはただ時間の問題である。

 中国製ワクチンはオミクロン株にほぼ効果がない

 昨年12月14日、香港大学微生物学部の袁國勇教授の研究チームによる最新研究結果で、シノバックなどの中国製ワクチンは、オミクロン株に対処できないことが示された。

 同研究では、ファイザー社またはシノバックのワクチンを2回接種した人のほとんどが、産生された血清抗体は、オミクロン株を防御するのに十分なレベルにはなかったことが示された。ファイザー社のワクチンはオミクロン株に対する効果が20%以下と著しく低下し、中国製のシノバックはさらに低い。

 現在のデータによると、中国人は中国製ワクチンを26億回分接種しており、そのほとんどがシノバックのワクチンである。中共が厳しい封鎖措置を実施していること自体は、中国のワクチンがオミクロンに対して無力であることを中共自身も認識していることを裏付けていると、外界は分析した。

 相次いでの「ロックダウン」は、中国経済を苦境に追い込むに違いない

 米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、伝染力の強いオミクロンの拡散を抑制するために、中共はより頻繁に、より広範囲にロックダウン措置を行わなければならない可能性があると分析した。

 モルガン・スタンレーの最新研究報告書によると、オミクロン株が中国で拡大し、複数の都市が封鎖された場合、第1四半期の中国経済の成長率は0.6〜0.7%低下し、4%強になるだろうという。中共の「ゼロコロナ」政策の実施により、経済の面では大きな代償を払うことになるだろう。

 「ゼロコロナ」政策は失敗し、中共は政治的リスクに直面する

 ここ2年間、中共は「ゼロコロナ」政策がどれほど有効かを国民に吹聴してきた。しかし、感染力の強いオミクロン株は、中共の「ゼロコロナ」を狙っているようだ。複数の専門家が、オミクロン株を「ゼロ」にする可能性はほぼゼロだと述べた。中共は現在、ジレンマに陥っている。

 モルガン・スタンレーによると、中国の集中治療室の病床数は、10万人あたり4.4床と、米国の約26床、韓国の11床に比べ、比較的少ないとのこと。つまり、オミクロン株の感染リスクは低くても、その感染者数が多ければ、中国の医療システムに大きな圧力をかけることを意味する。

 習近平総書記は2022年秋の第20回共産党大会で「3期目」を目指している。オミクロン株の感染拡大は、習氏を大きな政治的リスクにさらすことになる。ゼロコロナの方針を変えれば、自分の顔に泥を塗ることになるし、変えなければ、オミクロン株は高い代償を払わせることになる可能性がある。

 シドニー工科大学の中国問題専門家、馮崇義(ふうすうぎ)教授は、習氏は順調に再任するために、「現在、巨費を投じても、どんな犠牲を払ってでも、ゼロコロナ政策を実施するだろう」と述べた。

(翻訳・徳永木里子)