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 亡命組織「チベット・アクション・インスティテュート(注)」が7日に新しい報告書を発表した。

 同報告書によると、中国共産党(以下、中共)の政策により、チベット人生徒の4分の3が植民地的な寄宿学校ネットワークに強制的に入れられ、6歳から18歳までの80万人から90万人の子供たちが家族やコミュニティから引き離されており、自分の宗教を信仰と実践が禁じられている。この数字には、未知数の4歳児、5歳児は含まれていない。これらの学校は、チベット人のアイデンティティを消し去り、中共のナショナリズム的なアイデンティティに置き換えることに通して、中共の支配に対するあらゆる抵抗を排除することを目的としている。

 過去10年間、中共政権は地方学校を系統的に廃止し、中央化された寄宿学校に取って代わった。チベットの寺院学校やその他の私立学校は閉鎖を余儀なくされ、民営学校の責任者やチベット語教師、知識人などが逮捕された。

 同組織の創始者で、チベット系カナダ人の政治活動家であるラドン・テトン氏(45、女性)は、中共政権がチベットに設立した寄宿学校は、植民地的であり、他の教育選択肢を剥奪し、現在および将来の世代のチベット人に対する攻撃であり、チベット人の文化への承継を失い、自分自身を見失ってしまうことになると強調した。

 「仏教はチベット人にとって切り離せない生活の一部である。21世紀の現代生活においても、文化的伝統依然としてのチベット人のアイデンティティの核心的な要素である。中共が設置したこのような学校の目的は、チベット人のアイデンティティを変えたり、消したりすることである。それは、現在および将来の世代のチベット人に対する攻撃である。子供たちに自分がチベット人ではなく、中共に忠誠を誓う中国人あると認識させる。しかし、このようなチベット生徒が社会に出ても、中国の国家システムでは二流市民として扱われ、中国で一流の教育を受けても平等と成功を収めることができない」

 チベット人教師によると、地元の人々は4歳以上の子どもを寄宿学校に入れなければならず、そこでは学校の授業も教師も童謡や就寝前の物語もすべてマンダリンしか話さず、7歳で小学校に上がるころにはほとんど誰もチベット語を話せなくなってしまうという。

 チベット人がこうしたな寄宿学校に抗議すれば、中共当局からの脅迫や威嚇を受けることになる。例えば、ある警察官がかつて次のように述べていた。「ウィーチャット(微信、WeChat)でのチャット記録をすべて見た。言うことを聞かなければ、あなたたちを一人ずつ対処していく。我々にとって、それは簡単なことだ。この政策を受け入れず、子どもの通学を拒否するなら、抗議行為と見なす」

 同組織の研究者は、寄宿学校の子どもたちが、身体的・性的虐待、人種差別、政治的洗脳など、深刻な精神的・心理的トラウマを経験していることを明らかにした。恣意的な性的虐待や殴打を受けていた事例を目撃した女子生徒は、「学校内外の男性や男性教師が女子寮に頻繁に侵入している。体罰は想像を絶するほど凄まじいものだ。教師は怒ると椅子や鉄棒などで出血するまで殴るのだ。頻繁にひどく殴られるので、私たちは常に恐怖の中で過ごしている。植民的な寄宿学校での中学3年間は、まさに悪夢だった。それは、肉体的、精神的、心理的な拷問であり、疲労困憊(ひろうこんぱい)であった」と語った。

 人権団体「スチューデンツ・フォー・フリー・チベット(SFT)」のペマ・ドマ氏は、中共が強制的に6歳以下の子供を国営の寄宿学校に週5日から7日間生活させる唯一の目的は、チベット人としての独特性を忘れさせることである。これらの子供たちの学童期が国家暴力に奪われたことに胸が痛むと述べた。

 2022年の北京冬季五輪を近づく中、テトン氏は、現在、国際的に取られている「外交ボイコット」が十分ではなく、「共産党は弾圧と虐殺を推進し続けている。北京冬季五輪が計画通りに開催されれば、国際社会は共産党の人道に反する行為を承認したことになるでしょう。また、チベット人、ウイグル人、香港人、及び権利と自由を侵害されたすべての中国人にとって、傷口に塩を撒くことである」と述べた。

 これまで、国際社会は新疆ウイグル自治区の人権問題に注目している。最近では米国が北京五輪の外交ボイコットを表明し、主要国もそれに追随している。中共による人権迫害は、新疆だけでなく、チベット、香港、法輪功、多くの権利擁護者の問題でもある。さらに多くの人権問題が積み重なっている。国際社会がこれらを公平に対応し、より厳粛に直視し、より効果的に対処できるかどうかは、人々の知恵と道徳・勇気が試され続けられている。

 注:「チベット・アクション・インスティテュート」は、デジタル時代のチベット運動の能力と有効性を強化するために、デジタル・コミュニケーション・ツールと戦略的な非暴力行動を用いる組織で、2009年にラドン・テトン氏によって設立された。同組織は、チベット人活動家に対して仕掛けられるマルウェアやその他のオンライン攻撃を特定し、追跡し、抵抗することを支援している。

(翻訳・徳永木里子)