トリピーッリャの町で発掘した手工芸品(Silar, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons)

 一般的な認識では、太極図は道家の象徴で、中国から伝来しました。そして「卍」符は佛家のシンボルマークであり、インドから伝来しました。しかし、考古学者がウクライナのキエフ州附近のトリピーッリャの町で発掘した古代文明遺跡には、大規模な都市、熟練した手工芸品、先進的な天文学の成果のほか、「太極図」と「卍」の2種類の記号も見られました。

 大規模な都市

 7000年余り前に、トリピーッリャにはすでに巨大な都市がありました。トリピッリャ文化の都市の構造は周囲との調和がとれていて、広々とした広場と街があって、2階建ての別荘が整然と並んでいます。考察によると、トリピーッリャの古城は星の運行の原理によって建てられたそうです。数千年前、ヨーロッパ地域はまだ荒地であり、文明がありませんでしたが、トリピーッリャ人が都市の基盤整理をここまでうまくできた唯一考えられる理由は、トリピーッリャ人が天文星象学から得た知恵を巧みに日常生活に応用していたからであると、考古学者は考えていました。これは現代の文明でも及ぶことができません。

 熟練した手工芸品

 トリピッリャ文化で、出土された大量の陶器の皿やコップなどは、生地が薄くて美しく、色が鮮やかで多彩です。陶器に描かれた模様は熟練だけでなく、芸術水準もかなり高いです。連なる柄は、静止しているようで、回転しているようにも見え、まるで静寂さと躍動感を合わせ持ったグラフィックアートの様です。

 先進的な天文学

 トリピーッリャ人は星体の運行規則に対して非常に正確な把握をしています。彼らは独自の天文暦法を使用するほか、天文現象と天体運動について一定の認識を持っていました。トリピーッリャでは、螺旋の模様が至る所にあります。これらの模様は、NASAの衛星が撮影した銀河系が回転する時に現れる螺旋棒とよく似ています。

 そんなトリピッリャ文化では、初期の出土文物の図案の中に卍符と太極図の記号が見つかりました。学者によると、トリピッリャ文化において、記号は文字の機能を持ち、当時の人々はこれらの「文字」を使って宇宙と星体の運行と変化の状況を記録しました。

 神秘的な太極図

 古代中国の太極図は、道家が宇宙、時空、人体と生命を認識する智慧でありながら、宇宙と万物の生成、運行と存在の規律を探求する外在的な模式でもあります。一方、トリピッリャ文化のシンボルも「太極図」であり、しかも古代中国の太極図と同じ意味を持ちます。

 トリピッリャ文化の中の太極図は、外周の円環に6つの刻紋があり、4つのマスに分けられていることを学者が発見しました。この太極の図案は中国道家の経典著作『易経』の「四像」に非常に似ています。しかも、4つのマスにはそれぞれ2つの円図があり、合わせて8つの円図になり、まるで『易経』の八卦記号のようです。

太極(たいきょく)と八卦(はっけ)(Vision Times Japan)

 トリピッリャ文化では、太極図や回転状の紋様が服飾と日常器具などに広く使われています。昼夜の変化、季節の移り替わりなど、トリピーッリャ人は様々な図案で自然現象に対する観察と理解を表現しています。トリピーッリャ人から見ると、万事万物は動いており、全ては時間の運動によって変化するものだそうです。

 一見シンプルな図案に驚くべき智慧が秘められています。トリピーッリャ人は天文、天象の変化に対する把握と運用にも驚くべきことがあります。当時、すべての家屋の一階の真ん中には、神々を祭るために使われる祭壇が設置されていました。早期トリピーッリャ人は、佛家、道家の神と太陽の神を含む「光明の力」を崇拝していました。おそらく、トリピーッリャ人の原始的な生活方式は、天界に最も近い生活方式なのでしょう。

 佛家の象徴「卍」

 「卍」符は佛家を象徴しています。現代人の多くは、「卍」を佛教ならではの記号とし、インドから由来したと思っています。しかし、中国の先史文化だけでなく、多くの古代遺跡からも「卍」符が発見されていました。例えば、古代インド、アラブ、ロシア、スコットランド、アイルランド、古代のクレタ文明(ミノア文明)、マヤ文化、キリスト信仰、ビザンツ文化などで、「卍」の形跡が発見されていました。トリピッリャ文化も「卍」を使っていました。

 「卍」符は世界共通文化の一種とみなされ、多くの学者が研究しています。器具に描かれ、服飾に刺繍される「卍」符は、正方形に描かれる時は剛直にみえますし、やわらかい曲線に描かれる時は包容力を感じます。

1.古代ローマ;2.古代ギリシャ;3.古代韓国;4.古代チベット、日本及びキリスト教;5.古代ギリシャ;6.アジアの古代仏像(イメージ:XINSHENG.NET)

 佛家では「卍」を吉祥集結、万徳荘厳、善徳永存の象徴だと認識しています。チベットでは、「卍」は「永遠の光」を象徴し、生命は金剛のように破滅されることがないとされていました。佛家信仰では、佛像に「卍」が付くことから、「卍」は佛の慈悲と智慧を象徴し、自我を知ることで、悟りを開くことに達しようとしています。

 ウクライナのトリピッリャ文化は、歴史の中でも大海の一粟にすぎません。大量の出土文物から見ると、7000年前、一万年前、さらにもっと古い先史文明において、東西に現れた古代文明は天文、宇宙、人体と生命に対し独特の気持ちを持っていました。中でも「太極図」と「卍」記号は、千万年の時空を超え、現代の人々に思考と啓発をもたらすことになるでしょう。

(翻訳・清瑩)