「張果老が唐玄宗を謁見する図」絹本の一部(元・任仁發 / パブリック・ドメイン)

 近年来、家庭内の殺し合い、社会においての不可解な暴力事件、役人の不作為、自然界の異常気象や常識を超えた自然災害などのことが頻発しています。これらのことに多くの人々は、何となく世の中が「乱れている」と感じつつも、その原因についてはまったく分かりません。しかし、中国の伝説の仙人の張果老は、1500年前にすでに現在のこの乱世の原因をはっきり説きました。

 今から150年前に清代の修道者である無垢道人が書き下ろした『八仙得道傳』の中で、張果老が説いた「乱世」の原因について次のように記述されています。

陰陽の変化は乱世の原因

 「おおよそ善悪の分別は陰陽によるものであり、当初天地混沌の時、人々は邪念がなく、皆善人であったが、後世に至って、人々は邪念が日々強くなり、正念が薄くなり、正道から日々離れて行く。正念が極めて薄くなった時、つまり、陽気が消滅し、陰気が大いに盛んになる時である。人間と鬼との違いは、鬼が完全に陰性のものであるのに対し、人間には陽気があることだ。もし、人間から陽気がなくなってしまったら、鬼と同じになってしまう。」

 「その時になれば、世の中には淫らなことや陰湿なことが氾濫し、官職にある人は職務に心を傾けず、私腹を肥やすことばかりに気を使い、賄賂は公に行われる。普通の庶民は、孝道を忘れ、淫乱を求め、利己心が強く、礼儀や廉恥を無視してしまう。」

 「そうしたら、人間の鬼との違いがなくなり、人間社会はまるで鬼の世界になるのである。これからおよそ1500年後に、このような世界になるだろう。」

真の乱は人間の心の喪失

 「人世の乱は、戦争から始まるが、しかし、戦争は本当の乱ではない。なぜなら、戦争の乱はただ世事の乱であり、人間はまだ人間の心を持っているからである。人間から人の心が完全に失われ、人間が完全に鬼に化けてしまえば、それこそ真の乱である。」

後ろ向きにロバに乗った張果老。前進することは実は後退することであると世の人々に警鐘を鳴らした(ネット写真)

後ろ向きにロバに乗る真意

 張果(ちょうか)は、八仙の一人。敬称として「老」をつけて、「張果老」と呼ばれます。彼は唐の時代、恒州中條山に住み、当時すでに数百歳でした。玄宗朝に、彼は宮廷に招かれ、様々な超能力を見せました。彼はいつも後ろ向きにロバに乗り、一日数万里も移動できます。何故後ろ向きにロバに乗るのかというと、彼から見れば、人間社会は日々悪くなり、正道からますます離れているのに、人々はそれが前進していると勘違いしています。故に、彼は世の人々に警鐘を鳴らすために、いつも後ろ向きにロバに乗っていたという。

(文・東山)