マーク・ミリー氏(U.S. Secretary of Defense CC BY 2.0)

 新書『Peril(意訳:差し迫った危機)』の著者であるボブ・ウッドワード氏は20日、記者団のインタビューで、マーク・ミリー氏は中国共産党(以下、中共)との秘密電話について当時のトランプ前大統領には伝えていなかったものの、複数の米軍高官には伝えたと述べた。トランプ陣営はミリー氏の動きを「反逆罪」と非難している。

 同書からの抜粋によると、統合参謀本部議長のミリー氏は、トランプ政権時代に2020年10月30日と2021年1月8日の2回、中共に秘密電話をかけ、米国が近い将来、中国を攻撃することはないと伝えたという。さらに、米国が中共に奇襲攻撃をしかける場合には、事前に知らせるとまで言った。電話で「奇襲攻撃をかけない」と約束したことが反感を買った。

 トランプ政権時代に米陸軍次官補を務めたケイシー・ワルディンスキー氏は20日、ミリー氏やジェームズ・マコンビル米陸軍参謀長など、一部の米軍上級将官が一時期、「トランプ氏の指示に背いていた」と明かした。また、一部の上級将官が権限を逸脱した行為を繰り返し、トランプ氏の命令を意図的に弱化することが狙いだったと述べた。

 トランプ政権の最後に国防長官代理を務めたクリストファー・C・ミラー氏は、ミリー氏が行った中共への秘密電話を知らず、ミリー氏に許可を出したこともないと述べた。さらに「恥ずべき行為、前例のない不服従」と非難し、ミリー氏に即時辞任を要求した。

 ウッドワード氏は、ミリー氏が当時の中央情報局(CIA)長官ジーナ・ハスペル氏、国家安全保障局(NSA)長官ポール・ナカソネ氏、太平洋作戦を担当する複数の将官に秘密電話のことを伝えていたことを明らかにした。

 したがって、ウッドワード氏は、仮にトランプ氏が当時の秘密電話を知らなかったとしても、それは「隠す必要はない」と考えている。

(翻訳・徳永木里子)