(ネットより)

 2010年代に世界的な話題となった「ニカラグア運河」プロジェクトは、500億米ドル(約5.5兆円)を投資したとする中国「信威グループ」が受注しました。しかし、中国の資本市場再編の動きの中で、度重なる債務不履行の公告により6月1日に上場廃止となり、その責任者の王靖氏は資金とともに蒸発しました。運河の全体工事で、わずか30人のみを雇い、10キロの道のりしか整備していませんでした。詐欺が摘発された後、中国の財政管理能力が世界から疑われるようになっています。

 BBC4日の報道によると、北京政府が2012年に企業に海外進出を呼びかけ、「一帯一路」などの構想を打ち出し始めた頃、信威グループは香港に「ニカラグア運河開発投資有限会社」を設立しました。同社は、カリブ海(大西洋)と太平洋を結ぶ全長278キロの新運河の建設に500億米ドルを投資すると主張し、ニカラグア政府と緊密に連絡を取り合っていました。

 同プロジェクトは当時、世界から注目を集め、経済的・地政学的にもたらす影響は、運河そのものをはるかに超えました。類似のプロジェクト構想は過去に米国でも提案されましたが、技術的な問題や熱帯雨林などの自然環境にダメージを与える可能性があったため、実現には至りませんでした。

 2014年、王靖氏とニカラグアのダニエル・オルテガ大統領が起工式を行い、この投資によって40万人の雇用機会を創出できると発表し、注目を集めました。

 王靖氏はニカラグア運河などの海外投資プロジェクトを通して、中国A株市場の上場に成功し、メディアの宣伝により、同社の株価は時価総額2000億元(約3.4兆円)にまで上昇したといいます。ブルームバーグ・ビリオネア・インデックスによると、ピーク時には王靖氏の純資産は102億米ドル(約1.12兆円)に達していたと推定されました。しかし、2016年にメディアは、同氏と信威グループが財務報告書を改ざんしていたことを暴露し続けたため、2021年に上場廃止となりました。

 BBCの報道によると、香港「ニカラグア運河開発投資有限会社」の本社が入っているビルはすでに空っぽになっています。中国以外の国では、ニカラグア運河に関する報道において、「チャイニーズ(中国人)」という言葉が詐欺や略奪などネガティブな意味合いを持っています。

(翻訳・徳永木里子)