中国企業家の孫大午(Public domain, via Wikimedia Commons)

 中国当局を批判し、昨年11月から拘束されていた、河北省にある民間企業グループ「大午グループ」の創業者である孫大午氏と、28人の会社幹部のうち7人が9つの罪名で起訴されました。河北省高碑店市(こうひてんし)裁判所で15日から18日までの4日間、孫大午事件の初公判が行われました。「大午グループ」の弁護団は、圧力を受けながらも、訴訟記録をソーシャルメディアに投稿し続け、関心を寄せています。

 ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)によると、裁判所は初日の公判終了後に公開裁判であると声明しました。公開裁判といっても、傍聴者の人数は限られており、大午グループの約9人の従業員、わずか30人の親族やスタッフのみが傍聴席を与えられました。弁護団によると、5月17日から22日にかけて行われた公判前整理手続は急遽召集のため、準備するのに充分な時間が与えられなかったとのことです。検察側、弁護側、裁判側の三者が激しい議論を展開し、ほとんど合意が得られませんでした。

 ラジオ・フリー・アジアによると、15日に河北省高碑店市裁判所での審理は、厳重な警備のもとで行われました。ベテラン弁護士の楊斌氏は、同事件には当局が深く干渉していると指摘しました。中国共産党中央宣伝部、社会の安定性を保つためとし、事件を取材しようとするジャーナリストを直接取り押さえ、その場で送還しました。また、地方の司法局が弁護団を監視・管理しており、専用バスで送迎していました。

 それにもかかわらず、弁護団は裁判の情報を公開しました。16日から18日にかけて、中国人権弁護士会のウェブサイトでは、弁護団署名入りの裁判に関する訴訟記録が3日連続で掲載されました。

 同訴訟記録によると、弁護団は裁判中、事件の公式処理における一連の違法な操作と、いわゆる「犯罪証拠」の虚偽性を指摘しました。

 18日の訴訟記録では、弁護団の再三の要求の下で、「公共秩序騒乱」という罪名の根拠となる、2020年8月4日の大午グループによる「国家機関への集団押し込み」の映像を流したといいます。

 現場の映像によると、大午グループの従業員らは陳情のために、徐水区公安局の入り口から十数メートル離れたところにいました。入口には政府関係者や車が普通に出入りし、整然な秩序が保たれていました。しかし、突然現れた特殊警察が盾を持って陳情者を公安局の入り口に押し込み、機関内の警察官は陳情者を強引に公安局に引きずり込みました。

 孫大午事件の背景

 孫氏は、1985年に1,000羽の鶏と50頭の豚養育からスタートした農家で、「トップ養鶏家」として中国で有名になった後、大午グループを設立しました。 孫氏は、かつて中国企業家の「良心」と呼ばれていました。

 ネットの公開資料によると、孫氏は、地元の村人や従業員に1元(約17円)で治療を受けられる病院や、地元の村人が無料で通える農民専門学校を運営しています。

 2003年、大午グループは会社のウェブサイトに「中国の現状と歴史に関する二人の民間ビジネスマンの対話」など3つの記事を掲載したことで、当局から警告を受けました。警察は、これらの記事が当局のイメージを著しく低下させたとして、同社に6ヵ月間の営業停止を命じ、罰金を科しました。

 2020年11月、孫大午氏とその家族、同社の上級管理職など20人以上が逮捕されました。2021年5月、孫氏らの弁護団は、裁判所から孫氏らが9つの訴因で起訴されたという通知を受け取りました。

(翻訳・徳永木里子)