中国河南省では17日から大雨が続き、省都・鄭州市内の広い範囲が冠水し、市中心部だけで12人が死亡。鄭州市の気象局は20日夜、「1000年に1度」の大雨との見解を示し、警戒を呼び掛けた。各地の被災状況が深刻。

 鄭州市では、20日午後4時から同5時までの1時間雨量が200ミリを超え、1951年に鄭州市気象局が設立されて以来、60年間の観測史上最大を記録。鄭州市の年間平均降水量は640.8ミリであるが、17日からの3日間でほぼ1年分の雨が降った計算になるという。

 市内の水は腰までに達し、最も深いところは水深2メートルを越え、多くの住民が水に流され、多くの死者や行方不明者が出るなど、麻痺状態に陥った。

 鄭州市地下鉄駅のホームには、地下での長時間の温度低下による酸素不足が原因とされる、生死不明と思われる遺体の写真や動画がSNSに多数投稿されいるが、当局はこれまでに死者12名、負傷者5名としか発表していない。

 市内の地下鉄は完全に陥没した。5号線全体が浸水され、多くの人が行方不明になり、少なくとも数百人が閉じ込められていたという。投稿された動画には、多くの人がホームで意識を失って横たわり、心肺蘇生法が行われている様子が映し出されている。地下鉄2号線も浸水し、数千人が7時間以上も閉じ込められた。地上交通機関も完全に停止している。

 ネット上で頻繁に投稿されたインスタント動画には、地下鉄の線路が水没し、ホームには急激な水が流れ、乗客は腰まで水に浸かった状態で、電車の中に閉じ込められている様子が映っている。溺れた人の遺体がホームに無造作に置かれているだけの映像もあり、それを撮影している女性が泣きそうな声で「皆さん、見てください、本当にどこにも救援の連絡が取れなくて、ここに一番近いのは沙口の区間である」と述べた。

 現地時間21日朝、鄭州市当局は洪水による死者12人、負傷者5人の被害を認めたが、その数字の信憑性には大きな疑問が呈されている。

 河南省にある32の中・大型貯水池の水位が制限値を超え、中国軍は洛陽市にある貯水池が「いつ崩壊してもおかしくない」と警告し、全省が非常事態に陥っている。

 世界的に有名な嵩山少林寺(すうざんしょうりんじ)の正門の前でも、洪水が押し寄せ、遊覧車が洪水で流され、少林寺や龍門石窟など50以上の名所が緊急閉鎖された。

(翻訳・徳永木里子)