王滬寧(左から2番目)と習近平(The Russian Presidential Press and Information Office, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons)

 2021年5月29日付『大紀元』は、「王友群:王滬寧(おうこねい)は、習近平の『高官』としてどのような役割を果たしているのか?」という記事を掲載した。

 この中で、王友群は王滬寧が習主席を追い落とすため、いくつかの罠を仕掛けたと主張している。権謀術数が渦巻く中国共産党に関する鋭い分析なので、一部概略を紹介したい。

 その前に、まず、王滬寧という人物について簡単に触れておこう。

 現在、王は中国共産党の最高指導部、政治局常務委員の一人である。かつて王滬寧は、上海の名門、復旦大学教授だった。王は「上海幇」の大番頭、曾慶紅によって「大思想家」として江沢民主席に推薦され、中央政策研究室で働くことになった(2002年から同研究室主任)。その後、王は、江主席のために「三つの代表」、胡錦濤主席のために「科学的発展観」を産み出している。

 2012年11月、共産党第18回全国代表大会で、習副主席が党総書記に就任後、王滬寧は早速、「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」を創出した(習総書記はその頃から「中華民族の偉大なる復興」という「中国の夢」を提唱している。ひょっとすると、これも王の創作か)。

 2017年10月、共産党第19回全国代表大会で、王滬寧は政治局常務委員にまで上り詰めた。そして、王は、憲法に「習近平思想」を書き込む等して、習主席を賛美している。

 具体的に、王友群は王滬寧が習近平を4つの方法で陥れたと指摘する。

(1)世界的な伝染病、「新型コロナウイルス」の流行時、王滬寧はわざと習主席を誉めちぎった。

 「2020年初頭の1月、中国共産党が流行を隠蔽し、真実を語る医師を弾圧し、虚偽の情報を流したため、パンデミックは武漢から中国全土、世界へと広がった」。

 「2020年2月下旬、武漢がまだロックダウン中で多数の死者が出ている中、『大国戦“疫”』という本が出版された。この本は、全世界の人たちがパンデミックで苦しんでいる時、王が習の功徳を称えている。だが、この出版は、国内外で激しい非難を浴びた」。

(2)王滬寧は習主席にマルクス・レーニン主義を吹き込んだ。

 「2018年4月23日、共産党政治局は『共産党宣言』をグループで勉強した。 これは、中国共産党の思想的責任者である王滬寧が仕組んだことは間違いない」。

 「王滬寧は習主席の頭の中にマルクス・レーニン主義という『迷信』を流し続け、主席に残っていた正常な人間の思考の一部をマルクス・レーニン主義へと追い詰めた」。

(3)王滬寧は習主席を政治局常務委員会でますます「孤立」させた。

 「中国共産党の最高権威は、政治局常務委員会で、習近平、李克強、栗戦書、汪洋、王滬寧、趙楽際、韓正の7名で構成されている。江沢民・曾慶紅の取り巻きは、王滬寧、韓正、趙楽際の3人で、彼らは江・曾の率いる『上海幇』の重要なメンバーである」。

 「李克強首相は、かつて習主席による汚職摘発する側の重要な味方だった。 当時、李は習主席を強く支持していた。 しかし、2017年、共産党第19回全国代表大会以降、王滬寧の支配する党内メディアは、習と李の間に溝を作り続けた。今日、習近平の友好的な同盟はもはや存在しない」。

 「汪洋政治協商会議主席は、鄧小平の『改革・開放』路線を支持している。また、 汪洋は『すべての硬直した、古風で閉鎖的な考えに門戸を開く』よう呼びかけている。このような考え方は、習主席とは大きく異なる。結局、王滬寧の工作により、党の最高意思決定者である7人の政治局常務委員の中で、習近平の側近は栗戦書だけになってしまった」。

(4)王滬寧は習近平を共産党の最高指導部の中で「一匹狼」にした。

 (4)は(3)を追求した結果に違いない。「2021年は、中国共産党創立100周年に当たる。王滬寧が行った最も重要なことは、共産党史の書き換えを主導したことである。」

 「今年2月に出版された『中国共産党略史』の特徴は、かつての党の独裁者である毛沢東と、現在の党の指導者である習近平という2人にスポットを当てている」。

 「2012年11月に中国共産党の指導者に就任した習近平は、『中国共産党略史』が出版された時点で、政権に就いてからわずか8年3カ月しか経っていないにもかかわらず、146ページを費やした」。

 「一方、1976年10月から2012年11月まで36年間、中国共産党の最高指導者は、華国鋒・胡耀邦・趙紫陽・江沢民・胡錦濤、それに鄧小平である。この6人の党指導者の記述は全部でたった163ページに過ぎない。つまり、王滬寧は、この中国共産党史で、習主席をその6人より高い地位につけたのである」。

 以上のような手口で、王滬寧は、習主席を称賛する振りをしながら、いかに主席を蹴落とすか考えて行動していたふしがある。仮に、近い将来、党内クーデターで習主席の命脈が尽きるようならば、江沢民と曾慶紅の刺客、王滬寧による主席への罠が奏功した事になるだろう。

(文・澁谷 司)