アメリカ国防情報局の24時間体制の監視センター (DIA, Public domain, via Wikimedia Commons)

 米国の情報筋はこのほど、「史上最高位の中国共産党(以下、中共)亡命者」が3ヵ月間、米国防情報局(DIA)に「生物兵器プログラム」を含む、中国の「特殊兵器プログラム」について米国に打ち明けていたことを明らかにした。同事件をきっかけに、新型コロナウイルス(中共ウイルス、SARS-coV-2)の起源調査に対する米国の態度と、中共の国際社会での振る舞いに大きな波紋を及んだ。

 AP通信4日の報道によると、FOXニュースのキャスターであるタッカー・カールソン氏は、米情報機関内部の情報筋が保守系サイト「レッドステート」に匿名で同事件を明かしたと述べた。同情報筋によると、中共亡命者は「生物兵器プログラム」に関することなどを米国に明かしたという。

 エミー賞受賞者、ジャーナリストのハースリー氏は、史上最高位の「中国(共産党)亡命者」のことを認めた。同氏は情報筋の話を引用して、中共はウイルスの研究所流出という事実を隠すために、コウモリによるものだと見せかけたとツイートした。

 今回の中共亡命者が今までの最高官位であるならば、おそらく国家副主席に相当するだろうと分析した人もいる。なおかつ軍の中で生物兵器を担当している中共幹部であり、このような人は実質中国共産党体制の副主席に相当する。

 また、最近の米政府の新型コロナウイルスの起源に対する態度の変化も、同情報の信憑性を裏付けるだろう。

 米政府の動きを整理すると、まず、バイデン米大統領は5月26日、世界保健機関(WHO)の調査は透明性に欠けるとし、米情報機関に90日以内にウイルスの起源に関する報告書を提出するよう命じた。それまではウイルスの起源調査は、バイデン氏の重要な議題ではなかった。

 つぎに、ブリンケン米国務長官は11日、中国の外交担当トップの楊潔篪(ようけつち)共産党政治局員と電話で協議し、WHOの専門家チームに再び中国に赴き調査させることを要求した。

 米主流メディアの姿勢にも180度の変化があった。「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙5月23日の報道は、武漢ウイルス研究所の研究者3人が2019年11月に体調を崩して治療を求めたという、米情報機関による未公開の報告書の内容を引用した。これは中共が新型コロナウイルスの感染拡大を公式に発表する1カ月以上前にあったことである。

 フェイスブックは5月26日、「新型コロナウイルスは人為的なもの」という内容を含むコンテンツを今後、プラットフォームから削除しないという方針を発表した。

 このような米国社会の態度の変化を受け、中共公式メディアは反撃論を繰り返した。中共の公式メディア「人民網」は6日、ウイルストレイサービリティは政治的に利用され、米政府が「武漢ウイルス研究所流出説」を再び唱えたのは国内の政治的圧力によるものだと主張した。また、国際的な週刊科学ジャーナル「ネイチャー」のウェブサイトに掲載された文章を引用し、流出説は「アジア人に対する差別を悪化させる」と非難した。

 習近平総書記は5月31日に中共政治局のグループ学習で、中国のプロパガンダ政策について新たな指示を出した。政府関係者は「謙虚で控えめ」であるべきで、「信頼でき、愛と尊敬のある中国のイメージ作りに努めるよう要求した。また、仲間を増やし、多数派で団結し、中国を理解し関心を持つ国際的友人の輪を絶えず広げていくことを強調した。

 中国側の反応は、今回の件を乗り越えることは至難の業であることを承知した証である。強硬で対立的な姿勢を続けたとしても、共和党であれ、民主党であれ、米国を完全に刺激し、自らの立場がまずくなるだけである。確かな証拠、証人の出現がなければ、中共が戦略的姿勢を軟化させることはありえなかっただろうと分析したアナリストがいる。

(翻訳・徳永木里子)