昆明市内で移動している象(ツイッター動画のスクリーンショット)

 15頭の野生の象が、自然が豊かな中国南西部に位置する雲南省を1年かけて移動し、雲南省の省都である昆明市に到着した。中国公式メディアは疲れ果てて眠りに着いた象の群れの様子を捉えた航空写真を掲載し、「中国の宣伝に最適な野生の象」と称した。しかし、専門家は、近年野生の象は繫殖が増えたものの、生息地が縮小したことが遷移(せんい)の主な原因だと指摘した。

 北京師範大学生態学の張立教授はオンラインセミナーで、今回のアジア象の遷移要因を分析した。過去数年の自然保護が成果を上げ、象の数がだんだん増えたことと、雲南省で過去20年間アジア象に適切な生息地が40%減少したことが相まって、遷移を引き起こしたという。

 張立氏は、雲南省の最南端に位置するシーサンパンナ・タイ族自治州自然保護区周辺にある、広範囲な天然樹林がゴム林やお茶を植えるのに伐採されたため、アジア象の生息地が急減したことを挙げた。

 シーサンパンナ・タイ族自治州自然保護区の研究所長郭賢明は同セミナーで、ゴム林を植えることは同地区の主要経済収入源となり、多くのゴムと経済収入を得るために、他の生物を排除しなければならないと説明した。

 復旦大学生命科学院研究員王放氏は、熱帯樹林がゴム林に取って代わられたほかに、アジア象が好む草地や谷などの海抜が低い地区も経済開発の優先地区とされ、アジア象の居場所が相次いで奪われたと話した。

 野生の象の遷移が自然破壊によるものではないと考える専門家もいる。群れを率いる雌(メス)象が道に迷って、1年以上「迷子」になってしまったという。

 現在、象の群れの遷移要因は未だに定説がない。

(翻訳・北条)