香港の夜の景観(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 中国共産党が「香港版国家安全法」の実施を強行したことで、以前から約束していた「一国二制度」を終結させ、香港社会の不安を引き起こした。多国籍企業やプロフェッショナルがシンガポールなどのビジネス都市に移っている。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は7日、2019年以降、数十の多国籍企業が地域本部やオフィスを香港から移転していると報じた。クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W) が集計したデータによると、企業の移転が原因で、香港の商業施設の空室率は過去15年間で最も高くなっており、空室の8割以上は多国籍企業の撤退に起因しているという。2020年に香港を離れた人数(外国駐在員と香港の地元民を含む)は、リーマン・ショック以来のどの年よりも多かった。

 ゲーム開発会社であるソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は、リージョナル・エグゼクティブ・チームをシンガポールに移転した。欧州の高級品メーカーであるLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)は、モエ・ヘネシー・ディアジオのワイン部門の香港在住スタッフの一部を別の場所に移すと発表した。また、フランスの化粧品大手のロレアル社も、香港本社から一部のスタッフを移転させると表明した。

 政府が発表したデータによると、2020年に香港を離れた香港住民は、香港に入国して定住する意向のある人より約4万人多かったという。2020年の香港人口は約750万人で、4万6500人減少した。香港が中国に返還されて以来、2度目の人口減少であった。同時期に米国企業は香港の本社・事務所を45件閉鎖し、全体の6%を占めている。香港に進出している外資系企業の中で最も多いのが米国企業である。

 情報筋によると、大手銀行の中には、香港での業務を保留しているが、香港を離れる必要があった場合、他の都市でどのように業務を展開するかという緊急策を密かに準備しているという。

(翻訳・徳永木里子)