(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 心理学テクニックは、お買い物から製品の設計と運営、さらには職場の面接まで、さまざまな場面で使えます。正しく理解し、活用ができれば、思いもよらない成功が得られるかもしれません。ここで、有名な5つの心理学テクニックを紹介します。

 一、「おとり効果」:それ、本当にいいお買い物?

 デューク大学の行動経済学者のダン・アリエリー(Dan Ariely)さんが行った実験です。

 某雑誌の定期購読の広告を100人の学生に読ませた結果、59ドルの「WEB購読プラン」を選んだのは68人で、125ドルの「雑誌+WEB購読セットプラン」を選んだのは32人でした。

 ところが、125ドルの「雑誌購読プラン」という選択肢が加わると、「雑誌購読プラン」は誰も選ばず、代わりに、「WEB購読プラン」を選んだ人は16人に減り、同じく125ドルの「雑誌+WEB購読セットプラン」を選んだのは84人に増えました。

 このように、人の判断基準は、目の前にある比較対象に影響されやすいです。お買い物で、品物を選択しなければいけない時は、比較対象だけを見るのではなく、そのものが本当に必要なのかどうかを考えることが大切です。

 二、「模倣効果」:とりあえず真似してみよう!

 社会心理学者のアダム・ガリンスキー(Adam Galinsky)さんは、あるレストランで実験を行いました。

 レストランの店員を2組に分けました。A組の店員は、お客さんが注文した料理をそのまま繰り返して確認を取ります。一方、B組の店員は、お客さんが注文した料理を少し言い方を変えて確認を取ります。食事をする来店客の反応を観察しました。

 結果、A組の店員が受け取ったチップは、B組の店員より70%も多かったです。

 この実験で、相手の行動や習慣を模倣することで、好感を持たれやすいことが判明されました。人と付き合うのが苦手な人は、相手の行動を少し真似したり、相手の言った言葉を繰り返したりしてみると、好感を持たれるかもしれません。面接の時にも活用してみてくださいね。

 三、「目標勾配」:達成までの距離を示そう!

 コロンビア・ビジネス・スクールは、あるコーヒーショップで、ポイントカードを使って実験を行いました。

 コーヒー1杯を買うと、ポイントカードにはスタンプが1個貯まります。タイプAのポイントカードは、10個のスタンプが貯まると、コーヒー1杯を無料でもらえます。一方、タイプBのポイントカードは、コーヒー1杯を無料でもらうには12個のスタンプが必要ですが、ポイントカードに予め2個のスタンプが押されています。

 結果、Aタイプのポイントカードを持つ人より、Bタイプのポイントカードを持つ人の方が、1杯無料のコーヒーをもらった人数が多かったです。

 目標までの距離が分かれば、達成率を高めやすくなります。自分の目標達成だけでなく、他人に頼み事をする時にも、このテクニックを活用してみてください。

 四、「マシュマロ実験」:長期的な視野を持とう!

 スタンフォード大学の心理学者エッベ・エッベセン(Ebbe Ebbesen)さんは、643人の四歳児を対象に実験を行いました。

 すべての子どもたちの前にマシュマロをひとつ置きました。そして「私はちょっと用がある。マシュマロはキミたちにあげるけど、私が戻ってくるまで15分の間食べるのを我慢してたら、マシュマロをもうひとつあげるよ」と子どもたちに伝えました。結果、三分の一の子どもがひとつ目のマシュマロを食べませんでした。

 14年後、研究者たちは当時実験に参加した多くの子どもたちに対する追跡調査を行いました。1個目のマシュマロを食べなかった子どもは、成績が優れ、順調に大学に入学しました。1個目のマシュマロを食べた子どもと比べて、試験での平均成績が210点も高かったのです。そして、先生や親、同級生との交流がうまく、適応力と自制心が強かったです。一方、1個目のマシュマロを食べた子どもの多くは、大学に進学できず、低賃金の仕事に就いており、出世したのはほんのわずかでした。

 一つの誘惑に打ち勝つことができる人は、他のさまざまな誘惑にも打ち勝つことができます。一つの誘惑に耐えられない人は、他の誘惑にも負けてしまいます。ですから、まず、目の前の利益に捉われず、長期的な視野を持つようにしましょう。

 五、「小分け戦略」:無駄なアクションをやめよう!

 行動経済学者ディリップ・ソマン(Dilip Soman)さんと経済学者のアマール・チーマ(Amar Cheema)さんとの共同実験です。

 箱に入っている24枚のクッキーを被験者に食べてもらいます。A組がもらった箱には、クッキーがむき出しで入っていました。一方、B組がもらった箱に入っているクッキーは、1個1個、個別包装されていました。

 結果、A組は平均6日間でクッキーを完食しました。一方、B組は24日もかかって、やっとクッキーを食べ終えました。

 このように、必要アクションの数の差が、人の行動力に影響を与えます。実現したいことを他人にやってもらう場合には、必要アクションの数を減らすことで早く完了させることができるでしょう。

 以上、5つの簡単な心理学テクニックを紹介しました。成功に近づく方法は、案外簡単なことです。この5つのテクニックを、実践してみてはいかがでしょうか?

(翻訳・清瑩)