中国軍の東風ミサイル射程(Public domain, via Wikimedia Commons)

 対中政策に強硬姿勢を貫いてきたオーストラリアのモリソン政権はこのほど、中共のプロパガンダである英字紙 Global Times(環球時報)に「オーストラリアがもし台湾海峡での軍事衝突に介入すれば、中国のミサイル攻撃を受けるだろう」と脅されました。この脅迫はオーストラリアの国民の怒りを更に買ってしまい、もし駐豪の中国大使が同記事を否定しないのなら、その大使を追放するべきだと政府に呼びかけました。

 英字紙のGlobal Timesは中共の機関紙「人民日報」の傘下にあり、中国人に知られたくない情報や 中共の上層幹部が言いづらいことを海外に向けて発信しています。

 昨年6月、米国務省は Global Times は独立した報道機関ではなく、中共のプロパガンダ機関として諜報活動や世論戦、情報戦を仕掛ける宣伝機関であるため、中国中央テレビ、人民日報などとともに「外国使節団」と認定しました。Global Timesの記事は単なるメディアの報道記事ではなく、中共上層幹部の意見だと広く見なされています。

 この脅迫記事が掲載された後、オーストラリアのカーティン大学(Curtin University)の Joe Siracusa教授 は10日、オーストラリアのSky Newsの番組で、北京のミサイル攻撃脅迫について「彼らは外交上で大きなミスを犯した」と指摘し、対抗措置として、政府が駐豪の中国大使を呼び出し、同記事を否定してもらい、もし拒否すればオーストラリアから追放するべきだと訴えました。

 同記事が出されたきっかけはオーストラリアのモリソン首相が6日、台湾海峡でもし戦争が起きれば、オーストラリアが米国とインド太平洋地域の盟友を支援すると示したからだとされています。

 モリソン首相のこの態度に対し、Global Times の胡錫進総編集長は7日、記事の中で「台湾海峡で軍事衝突が発生した場合、オーストラリアは米軍を支援し戦争に参加すると唱えたり、ほのめかしたりし続け、オーストラリアのメディアもこれに加勢し煽っていることに鑑み、中国は、オーストラリアが台湾海峡で軍事的干渉を行った場合、あるいは中国の沿岸海域で中国軍と戦うために軍隊を派遣した場合には、オーストラリア国内にある軍事施設や関連主要施設に対し、報復措置として長距離攻撃を計画するべきだ」と述べ、北京当局にミサイル攻撃の計画を提案しました。これは中共上層部が公に言い出しにくい脅しをGlobal Timesが代弁しました。

 この軍事報復の脅しは世界から反感を買うだけではないでしょうか。

(新時代Newsより転載)