東京大学で講演する高原明生教授

 9月29日、笹川平和財団が主催するプロジェクト「SPF China Observer」は「中国の定点観測」を行い、各分野のエキスパートが東京大学で論じた。

 36年前のこの日、日中国交正常化が成立し、同時に日中共同声明に基づき、日本はそれまで国交のあった台湾に断交を通告した。

 「毛沢東時代から今に至るまで、中国はいくら経済発展をしようと、その構造に大きな変化はない」と阿古智子准教授(東京大学)は言う。

 当時、日本が台湾に断交を通告したように、エルサルバドルなどの国が、中国にすり寄る形で台湾との国交を断ったのは記憶に新しい。

 井上一郎教授(関西学院大学)は「そういった国に対し、アメリカが駐在大使を引き上げている」と指摘する。

東京大学で講演する阿古智子准教授

 焦点となる米中関係

 高原明生教授(東京大学)は「国際関係史上、2018年は非常に重要な年として記録されるかもしれない」とし、中国にとって米中関係の安定がすべての基礎であり、米中摩擦によって中国の政治・経済・外交、あらゆる面で揺らいでいるとの見方を示した。また、米中間に入った亀裂を察知した金正恩について、その巧妙な立ち回りについても解説した。

 1989年にマルタ会談で冷戦終結が宣言され、2年後にソ連が解体した。社会主義の本営は中国に移り、社会主義陣営と自由社会の対局は、最終局面の様相を呈している。

 現在、日中両国に関係改善の兆しが見られる。高原教授の指摘する「中国の外交パターン」、「中国の描く戦略と日米同盟の戦略」は今後、どのような動きをみせるのか。

 小原凡司氏(笹川平和財団)は、プロジェクトを通して「群盲が象をなでる」と表現する。地理的、外交的にも米中に挟まれる日本として、改めてその全体像を知る必要性が迫っている。

(吉村作驕)

SPF China Observer WEB論考集
https://www.spf.org/spf-china-observer/

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