2月22日、ミャンマーのヤンゴン市での抗議活動(ツイッターより)

 現在、ミャンマー国民は、習近平氏が率いる中国共産党(以下、中共)政権がミャンマーの軍事クーデターを支持したと信じています。ネット上の映像でも、ミャンマーの軍服を着た兵士が標準的な中国語で号令を発していることから、中共の軍隊がミャンマーに入り、平和的な抗議をするミャンマー国民を抑圧するために、ミャンマーの軍人になりすましていることがわかります。中共のこの手段は、かつて香港で使用されたことがあります。香港は中国の領土ですが、ミャンマーは中国の領土ではありません。ではなぜ、習近平氏はミャンマーの軍事クーデターを支持するのでしょうか?

 中共の意図を明確に理解するためには、中共の戦略的展開から分析する必要があります。

 香港の実業家である袁弓夷氏は、中共の外交当局者である楊洁篪氏と王毅氏の米国に対する最近の声明から、習近平氏の態度が非常に強硬であると考えています。新疆、チベット、香港、台湾の問題を中共国内の問題と見ており、外国政府の批判を許しません。

 昨年7月に香港版の国家安全保障法が導入されたことは、習近平氏にとっては勝利でした。袁弓夷氏は、習近平氏は常に利益と損失を比較検討していると述べました。例えば、香港版の国家安全保障法が可決された後、全世界が中共を非難したが、習近平氏はこれによって党内での威信を確立しました。また、香港の4000億米ドルを超える外国為替準備金も、中共のポケットに入りました。そのため、習近平氏は勝利したと感じています。香港を支配することに成功した彼の野望は増々大きくなり、次の目標は台湾です。

 習近平氏のミャンマーの軍事クーデターに対する支持は、中共の世界戦略の内の一つに過ぎません。

 袁弓夷氏は、習近平氏が次の2つの理由で台湾を武力で脅かしたと考えています。1つ目に、習近平氏は自分の権力を最も気にかけており、党内の政敵を最も恐れているからです。米国と比較して、習近平氏には統治の正当性がなく、国民の投票がないため、いつでも転覆する可能性があります。2つ目は、中国の経済が現在衰退しているからです。習近平氏は、トランプ氏が在任中に中国に課した経済制裁をバイデン米大統領に解除させることを望んでいるため、紛争を引き起こして米国政府と中共との交渉を強いています。習近平氏は、バイデン政権が中共に対して厳しい措置をとることをしないと考えているため、このような強硬手段に出ています。

 元中共海軍中佐の姚誠氏は2月24日、新唐人テレビの記者に対し、中共は70年以上にわたって台湾に対する軍事作戦の準備を進めてきたと語りました。今は中国と米国の軍事力の差が最も小さい時期です。そのため、中共は間違いなく今が台湾を攻撃する最高の機会だと考えています。習近平氏が国家主席の終身制を策定した際に提唱した理由は、台湾と戦い、中国を統一するために、最高指導部の安定を維持したいとのことです。来年(2022年)の秋に中共のトップが入れ替わる前に中共が台湾を攻撃しなければ、習近平氏は辞任しなければなりません。したがって、中共が今年台湾を攻撃する可能性は非常に高いです。中共が台湾を攻撃する際に巨大な損失を心配しているかどうかについて、姚誠氏は、中共は国民の生活や生命を気にかけたことは一度もなく、習近平氏は如何なる手段をもってしても彼の目的を果たすと考えています。

 元中共海軍将校として、姚誠氏は中共軍の状況をよく知っています。習近平氏が政権を握って以来、中共は多数の航空機と軍艦を製造していると彼は語りました。中共の内部筋によると、台湾を攻撃するには、中共は少なくとも70隻の大型揚陸艦と10万人の海兵隊員を必要とします。2020年の時点で、中共は74隻の大型揚陸艦を建造しており、台湾を攻撃するのに必要な数に達しています。海兵隊は現在4万人しかいませんが、新たに2つの集団軍が完全に海兵隊に変換されました。さらに、もう二つの集団軍も台湾を攻撃する訓練に参加しています。これらの合計4つの集団軍を含めば、総兵員数は10万人を超えます。したがって、中共は台湾を攻撃するための各準備を完了しています。過去2か月間の中共の軍用機による台湾への頻繁な侵入は、中共の台湾への開戦前の前哨戦です。

中共海軍のドック型輸送揚陸艦――071型揚陸艦(パブリック・ドメイン)

 最近、軍事対立から数ヶ月の膠着状態の後、中国とインドは2月10日に、最前線からの軍隊の撤退について合意に達したと発表しました。最近、衛星写真が、中共が中国とインドの国境にあるバンゴン湖から軍隊を撤退させたことを示していることから、中共が軍隊の配備を再調整しており、台湾海峡または南シナ海に軍隊を集中させ、台湾に対する軍事作戦を開始するための準備を行っている可能性が高いことが考えられます。

 習近平氏が台湾に対して軍事行動を起こすことを計画している場合、間違いなく米国の対応を考慮に入れるでしょう。中共の台湾に対する武力の脅威への対抗策として、米国とその同盟国は中国の沿岸地域を封鎖する可能性があり、その結果、外国から輸入された戦略的資材は中国の沿岸港に到達できなくなります。第二次世界大戦では、日本軍の封鎖により、当時の中華民国政府は中国沿岸から直接米国の援助を受けることができなかったため、中国とミャンマーを繋がるビルマ公路を作り、米国の救援物資はミャンマーを経由して中国本土に輸送されました。したがって、習近平氏は、米軍によって沿岸地域が封鎖された後、必要な戦略的資材(石油など)をミャンマーから中国に輸送するという当時の中華民国政府の策略を採用する可能性があります。

 ミャンマーのアウンサンスーチー政権は常に中共に非常に友好的であり、ミャンマーの運命を中共に結び付けるために『ミャンマー・中国運命共同体』を構築すると発表しました。しかし、民主的に選出されたアウンサンスーチー政権は中共とは異なる理念を持っており、米国などの民主主義国とも非常に緊密な関係を持っています。習近平氏は、アウンサンスーチー氏を完全に支配することも、アウンサンスーチー氏の理念に同意することもできません。ましてやアウンサンスーチー政権と米国、日本、その他の国々との緊密な協力を容認することもできません。したがって、習近平氏は必然的に中共の理念に類似したミャンマー軍事政権を協力の対象とし、ミャンマー支配の目標を達成するために軍事クーデターの発足を支援しました。

 今年、中共が台湾を攻撃した場合、中共の全体的な戦略目標をできるだけ早く達成するために、ミャンマー軍事政府は、ミャンマーに入る中共軍と協力して、ミャンマー市民による平和的抗議に対して全面的かつ残酷な抑圧を実行するでしょう。 この状況で、西側の民主主義国家が中共に対し断固とした態度をとることができなければ、最悪の事態を招く恐れがあるでしょう。

(文・黎宜明/翻訳・神谷一真)