『西遊記』の登場人物を描いた絵画(頤和園)(イメージ:Wikimedia Commons / Shizhao CC BY-SA 3.0

 本物とは、本当の物です。そして偽物とは、偽りの物、虚偽の物です。偽物は、骨董品や古典画作にだけでなく、世の中のあらゆる業界や領域に存在します。ですので、どれだけ博学であっても、真偽を見極める能力を持つことが本当の知恵です。

 昨今の偽札のクオリティの高さは、肉眼や手では全く判断できず、高精度の機器でしか分別できません。偽の論文や偽の学位が溢れるほど多くある一方、本当の論文を書く真の学者が少なくなりつつあります。東アジアの某国では、多くの官僚は勉強もせず、権力だけで博士号をもらっています。しかし、十数年も勉強し続けてきた人も、本当の才能と地に着いた学識を持っていなければ、その博士号も疑われます。

 武漢肺炎が全世界で猛威を振るう中、ウイルスや感染状況に関する論文で、世界諸国の学術雑誌に掲載されているものが32,000編を超えます。しかしこれらは全く役に立たず、感染は依然として拡大し続け、数百万人が感染してしまいました。感染病対策に役立つ論文がどれほど少ないのかが垣間見えます。

 御年68歳の馬保国(ば・ほこく)さんは、「渾元形意太極拳」の家元と自称し、一日で二人のヨーロッパボックシングチャンピオンをノックダウンし、MMAチャンピオンのピーター=アーヴィング(Peter Irving)をも撃破したというホラを吹いていました。本人曰く、「わしが本気を出していたら相手はとっくに死んでいた」そうです。こんな馬さんですが、デビュー戦のアマチュアボクサーの王慶民(おう・けいみん)さんとの対決で、わずか30秒でやられてしまい、重傷しました。どうやら太極拳の家元にも、偽物が存在しているようです。

 買い物をする時、色とりどりの商品に魅了され、ついついたくさん買ってしまった経験があるかもしれません。しかし綺麗に見えるのは、外観だけの場合も少なくありません。合成保存料がふんだんに使われたトマトや、遺伝子組み換えされたじゃがいもなど、外観だけはすごく綺麗に見えるけど味が全くしない農産物も、偽物と言えるでしょう。本物の農産物は、伝統的な天然栽培法を貫く農家でしか、もはや見られないかもしれません。

 SNSに載っている写真はとても綺麗に見えますが、修正されてないものは少ないでしょう。本当の顔と写真の差に驚くこともあります。メイクの技術が向上している中、ウイッグや入れ歯も本物と瓜二つで、それを外すと別人になることもあるでしょう。ですので、奥深い本質に目を向けず、ただ表面だけに注目していたら、自分や他人、さらにはこの世の中にも、浅はかな認識しか得られないでしょう。

 本物はどんな時も本物で、偽物もどんな時も偽物です。ウイッグは偽物の髪の毛ですから、本物の髪の毛にはなれませんし、入れ歯も偽物の歯なので、技術がどれほど高くなっても本物の歯にはなれません。友達が歯の治療に行く時、私はいつも「病んだ歯が自然に抜けても、まだ健在な、唯一無二の自歯を易々と抜かないでね」と進言しています。また、『西遊記』を読む時、私の一番のお気に入りは、孫悟空の火眼金睛(かがんきんせい)でした。どんな魑魅魍魎でも、全てを見通すことのできるその火眼金睛で、真実を見抜くのです。

 本物と真実が減りつつあるこの世は、人々が伝統文化に背を向け、道徳の水準が下がった結果だとも言えます。神仏への信仰心がなくなったら、人類は勝手気ままに振る舞い、どんな方法を使っても、偽物を断絶することができません。某国では、偽物の取り締まりキャンペーンをやるたび、偽物がかえって多くなってしまうそうです。そのため、「返本帰真(へんぽんきしん)」が人生において唯一の突破口になります。自らの心に向けて真を求めることこそ、本物もしくは宝物を誕生させることができるのです。

 この世の中では、本物と偽物を見極めるには知恵が必要であることと同じく、正義と邪悪を見極めるのも知恵が必要です。そのために、本物を見つける慧眼と、正しい道を歩む心が不可欠です。儚く短い人生において、人の運命はそれぞれですが、真実のことを話し、嘘偽りのないことをし、正しい道を歩むことが不変の真理です。これを実践するのは難しいかもしれませんが、神様が与えて下さった「返本帰真」という修行の道を歩む人こそ、輝く未来を迎えることができるのです。

(文・貫明/翻訳・常夏)